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双子の魔術師と仮面の盗賊  作者: curono
3章 双子、湖で大冒険!

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闇の石を守護するもの

 その広間は、思った以上に広かった。今まで通ってきた道は薄暗くかび臭く、無機質なつくりだったものと比べ、この広間は確実に特殊なものなのだろう。広間の壁にそろうように、奇妙な柱が整列していた。その柱は白く輝き、広間の隅々まで照らしていた。黒っぽい灰色の壁しか続いていなかった通路のそれとは違い、この広間の壁は水色に近い灰色で、壁全体に奇妙な模様が描かれていた。その広間のずっと奥に、いかにも何かを供えているような台座が見えた。

「……さすが……闇の石がある場所だべ……」

「今までと全然雰囲気が違うよね……」

 先にある台座には気がついているものの、双子は慎重に足を進めた。いつもなら好奇心と探究心に負け、真っ先に目的の場所に駆け出しそうな二人だが、さすがに今回は違った。二人は広間に漂う異様な雰囲気と一緒に、奇妙な緊張感を感じていたのだ。

 それにはキショウも気がついているのだろう。無言のまま、ある一点をにらんで動かない。

「……あの台座に……あるんだべか……キショウ?」

 沈黙を守り続けるキショウに静かにシンが尋ねるが、キショウの返事はない。

「……キショウ?」

 その様子にシンジが問いかけると、キショウが突然口を開いた。

「しっ!……お前ら、動くなよ……」

 その言葉に双子はとっさに立ち止まる。キショウのその声に張り詰めた雰囲気を感じ、双子にも緊張が走る。

 ふいに三人の肌に悪寒が走りぬけた。

「……! 何かいるだべ!」

 瞬間的に双子が構えを取るその目の前で、何もない床から水が吹き上げてきた。

「こいつは……!」

「水系の魔物だね!」

 双子と一匹が声を上げるその間に、目の前の水はみるみる膨れ上がり、その姿を現した。水はそのまま人の形を作り上げ、その周囲を取り巻くように水泡がクルクルと宙に浮かんだ。その姿は一見女性のように見えるが、その髪に当たる部分はうねうねと形を常に変化させ、瞳は空虚くうきょなまなざしながら不気味にも敵意を感じさせた。水の魔物はその空虚な瞳で双子を捕らえると、激しく口をあけ咆哮ほうこうするそぶりを見せた。しかしそこからは声はもれることなく、変わりに彼女を取り巻く水のかたまりがバシャバシャと激しい衝突音を響かせた。

「こんな魔物初めてみるだ!! 水がそのまま魔物になってるだべよ!」

 闇の石の本をかばんに納め、風の剣を構えながらシンが叫ぶと、シンジも隣で氷の剣を練成し答えた。

「僕も人型の水の魔物は初めてだよ! これはちょっと戦い方に迷うな……」

 双子のその真上に飛びあがり、キショウは注意を促す。

「こいつは精霊系か……もしくは悪霊系の魔物だろうな。安易あんいに近づくなよ」

「近づくなって……近づかないでどうやって戦うだべさ!?」

 そんな会話をしている間に、水の魔物はその腕を双子めがけて伸ばしてきた。その腕はたちまちその長さを変え、シン目がけて突撃してきた。

 しかしスピードはシンが上手だった。その水の腕がシンに届くよりも速く、その衝撃風からシンはスラリと身をかわし、その攻撃を流す。

 シンを捕らえられなかったその水流は、そのまま方向を変え、今度はシンジに向けて突進してきた。

 シンジの動きに迷いはなかった。シンジはその水の腕の真正面に位置をずらすと、その氷の剣先を水に向け、呪文を唱えた。

氷刃ヒョウジン!』

 たちまち剣先から冷たい冷気がふきだし、その水と衝突しょうとつする。

 パキパキと水が急激に凍りつく音が響きわたる。

「凍らせただべか!?」

 その音に、シンが期待を込めて声を上げたその直後だ。シンジの剣先のその奥で、水流が膨れ上がり、そのままシンジが作った氷をも飲み込んで、そのままシンジに突撃した。

 シンジの魔法よりも、その魔物の水流の方が上手だったのだ。

 激しい水流の流れに、そのままシンジは壁に押しやられ激しく身体を壁に打ち付けた。ドスンという鈍い音と共に、水流の激しく壁に打ち付ける音が広間に響いた。水流はそのまま止まることなく、シンジを壁に押し付けたままだ。

「シンジの氷魔法が効かないだべか!?」

 その様子に、シンが一瞬たじろぐ。

「油断するな! また来るぞ!」

 そんなシンジに気をとられているシンに、キショウの鋭い声が飛ぶ。シンが敵に気配を向けると、水の魔物は残るもう一方の手を、今まさにシンに向けて伸ばそうとするところだった。シンはとっさに風の剣を構え、すばやくそれをふり払った。

鎌鼬かまいたち!』

 剣先からはじき出された風の刃は、一瞬で水の魔物の腕を正面から切り裂いた。バシャバシャと水が床に零れ落ちる音と共に、その腕はただの水となりくだけ落ちる。しかし魔物の表情は涼しげだ。くだけた水の腕は、ゆっくりとまた伸び、もとの形を作る。

「やっぱり駄目だべかっ!」

 自分の攻撃が効かないであろう事を、少しは予想していたらしい。シンは下唇を噛んでまた剣を構えた。

「水の身体だからな、物理的な攻撃はきかねぇだろうな……」

 シンのすぐ横に下りて、キショウもつぶやく。

「こいつは攻撃に迷うな……」

「じゃあ一体どうやって戦えばいいだべ!?」

 そんなシンとキショウに向けて、また魔物の腕が伸びる。シンはそれを紙一重で交わすと、今度は両手をあわせ呪文を唱える。

火焔カエン!』

 シンの手中に現れた炎は燃え盛る音をたて、魔物に直撃した。しかし、魔物は水の身体だ。ジュウと音を立て、白い煙となって魔物の身体に飲み込まれた。

「やっぱり火系は無理だべさ!」

 シンはそう叫んで頭を抱えるが、キショウはそんなシンの髪を引っ張りながら声を上げた。

「いや! 意外に効果ありそうだぜ、見ろよ!」

 キショウが指さすその先で、水の魔物はその表情をゆがめていた。まるでその炎が当たった場所を痛がるかのようだ。

「なるほどな。水の身体だ。その水を失うことは苦痛のようだな!」

 キショウは口の端を歪めて笑うと、シンの髪を再び軽く引きながら声をかけた。

「意外と炎は効くぜ。シン、使う魔法を切り替えろ」

 しかし、キショウの期待とは裏腹に、シンの表情は重い。

「でもだべな……」

「……なんだよ!? 何か問題あるのか!?」

 はっきりしないシンの態度にキショウがいらついて声を荒げると、シンは敵をにらみつけたまま小さく口を動かした。

「こんだけの水を蒸発させる技は大技だべ……。技発動させる余裕があるか微妙だべ」

 確かにシンが心配するだけの事はある。スピードに自信はあるシンだったが、水の魔物の攻撃は先ほどの炎攻撃で激しさを増した。その片手は変わらずシンジを押さえつけたままだが、もう片方の腕は先ほどよりも速さを増して彼に襲い掛かってきた。それをかわしながら、火焔かえん程度の技なら問題はないだろう。しかし、

「火焔の魔法じゃ無理だべ! これだけの水を一気に蒸発させるなら、召喚魔法が必要だべ! この攻撃の合間では……」

と、シンがキショウに説明しながら攻撃をかわしているその時だ。

 ぶるぶると魔物の身体と、そしてこの広間の空間が一瞬震えた。

皓皓コウコウ!!』

 水の中からシンジの大声が響いた。



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