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双子の魔術師と仮面の盗賊  作者: curono
3章 双子、湖で大冒険!

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湖の中へ

 先生の姿が見えなくなると、シンのボサボサ髪の中からキショウが顔をだした。

「ふぅん、アイツがお前らの担任の先生ってわけか。なんだ、警備員がいなけりゃあいつについていってもよかったな……」

 ちょっと残念そうにキショウがつぶやくと、シンがとんでもない、と言う表情で声をかける。

「何言ってるだべ! むしろこれからが本番だべさ!」

 兄の言葉にシンジもフードをかぶりなおして、彼らの目の前にある林の先を見つめながらつぶやく。

「そうだね、湖が怪しい、か……。石の反応も実はその湖を指しているんじゃ……」

 そう言いながらシンジが歩みだすと、シンもそれに続く。キショウも双子が歩みだすと、去っていった先生の後ろ姿から目を放し、双子の行く先へ目を向けた。


 双子が林を抜けるのに時間は掛からなかった。歩いてすぐに目の前が開けた。彼らの前に広がったのは、大きな湖だった。霧がかった神秘的な雰囲気の中、湖をかこう木々も静かに天を指すように伸びていた。ひんやりとした空気の温度こそ変わらなかったが、その湖の影響か、空気全体が青みを帯びているように感じられた。湖は意外に大きく、対岸の岩がとても小さく見えた。

 双子はその湖にしばし見とれていたが、シンジは本の光に気が付きそちらに目を奪われた。本に描かれた石の点滅が速くなっていたのだ。闇の石に近づいている証拠だ。

「やっぱり反応が強まってる。ねぇ、キショウ。この湖の中を指してないかな?」

 シンジが問いかけると、キショウはシンの頭からふわりと浮かび上がり、シンジの肩に乗る。

「ふぅむ……。…………だな、確かにこりゃ湖の中を指してやがる」

 キショウは肩の上で難しそうな表情をしてうなる。その言葉にシンもシンジに近づいて本をのぞき込む。確かに光の指し示す先は、この湖の下を指している。

「これはどうしたらいいんだべか? 湖の中じゃ、とてもじゃないけど入れないだよ?」

「そうだな、深すぎて潜れる距離じゃないだろ。魚類系の種族でもない限り窒息ちっそくだな」

 シンの言葉にキショウがなかば諦め気味に言い、軽くため息をついた。

 その横で、双子が奇妙な沈黙を続けていることに、キショウは気が付いた。

「……どうした?」

 キショウが声をかけるが双子は反応しなかった。二人は無言のまま、目線で会話をしていたようである。最初に口を開いたのはシンの方だった。

「……いや、さすがにやめた方がいいと思うだべよ?」

「いや、僕は行けそうな気がする」

「……?」

 はたから聞いているキショウには何の会話だかさっぱり見当が付かない。

「この森だって、陰の気が強いだよ? 湖の中だって魔物がいないとは限らないだべ!」

「ううん、この湖ならいけると思う。シンも感じない? この湖の水、かなりの魔力を秘めてる感じがする」

 シンジの自信たっぷりな言い方に、シンが一瞬たじろぐ。

「……そうだべか? オラには水の魔力を感じる力はないだべが……。シンジが感じるなら本物だべな」

「おい、一体何の話だよ?」

 意味が分からずキショウが口をはさむが、双子の耳には届いてないらしい。

「試しに行ってみる。危なかったらすぐ戻るから、ちょっと待ってて!」

 言うが早いが、シンジは持っていた本をシンに預け、キショウがあっと思う間もなく、ぴょんと湖に飛び込んだ。

 ざぷん、と水しぶきの音をたて、シンジはあっという間に湖に潜ってしまった。その様子にキショウがシンの髪の毛を引っ張って抗議する。

「お、おいおい大丈夫なのか!? 突然飛び込んじまったぞ!?」

「あだだだっ! 引っ張るでねーだよ!!」

 のん気にしている場合かとキショウが苛立いらだちげに訴えると、シンはキショウのその小さな手を振り払って首を振る。

「シンジのことを心配しているだべか? アイツなら泳ぎは得意だからあんまり心配いらないだべさ」

「泳ぎでいける距離なもんか! この湖の底はどう考えても泳ぎきっていけるものじゃないぞ! そのうえ湖の中に魔物がいないとも限らないだろうが!」

「大丈夫だべさ~」

 キショウの言葉にシンはケラケラと笑って答える。

「ああ見えてもシンジは水の属性を持っているだべ。魚族ほどではないべが、泳ぐのも速いし、何より水の中で行動は制限されねーんだべ」

「ち、そういうことかよ」

 シンの説明を聞いて、キショウは胸をなでおろす。水の属性を持つ精霊族ならば、水中であっても行動は制限されないのだ。唯一心配だったのは、水中に魔物がいないかどうかと言うくらいだろうか。

 思ったよりもシンジが戻ってくるのは早かった。数分ほどしてザプンとまた音を立て、水面からシンジが顔を出した。

「お、早かっただべな」

 現れたシンジを見て、シンとキショウが心配して二の句をかけるより早く、シンジが興奮した口調でそれをさえぎった。

「すごいよ! 今底まで見てきた!! すごいの! なんか、建物があった!」

「……建物? 水の中にだべか?」

「それより魔物はいなかったのか?」

 シンとキショウが問うと、シンジはうんうんとうなずいて、

「そ、水の中にお城? 見たいな建物があった。魔物は全然いなかったよ。多分……」

と、そこまで言って陸に上がる。

「この水、水の魔力が強いからじゃないかな?」

「水の魔力……か。力ある水なんだな。聖水みたいなもんか」

 シンジの言葉を聴いて、キショウはあごに手を当てて考え込む。

「尚のこと怪しいだべな! 石の反応は湖のそこを指してるだ! その上、底には謎の城!! 水にも魔力が込められているとなると……これは、絶対怪しいだ!! 行かなくちゃならねーだ」

 弟の報告に完全に興奮し、シンは握りこぶしを作って叫ぶ。シンジもうんうん、とうなずいて興奮が治まらない様子だ。よーしいくだべよ、と意気込むシンに頭上からキショウが釘を刺す。

「待て待て待て待て待て。シンジは水の中に入れるからいいものの、お前は水の中では無理があるだろ。そんな建物があるって事は、相当深いんじゃないか?」

 キショウの言葉にシンジがこくりとうなずく。

「結構深かった。学校二つ分くらい潜ったかな?」

「と、なれば、ちとオレやシンは潜れねぇな。そこまで息が持たないし、建物の中の詮索なんぞ無理だろ。建物の中だって水だらけなんだぞ」

「だぁああ! そうだったべ! 忘れてただ!」

 キショウの発言に、シンは頭を抱えてうなる。完全に盲点だったらしい。しかし口をはさんだシンジの発言は、あまりにも予想外だった。

「……あれ? でも建物は何かバリアみたいな……膜に覆われてて空気があったよ?」

「……は?」

「だから多分、建物の中まで入れたら後は二人とも、問題ないんじゃないかな?」

「よかっただ!! じゃ、問題ないだべな!!」

 シンジの発言に途端とたんシンが表情を輝かせるが、に落ちないのはキショウの方だ。

「ちょっと待て、なんだその不可解な膜ってのは?」

「なんだろね、わかんない。でも建物の周りにシャボン玉みたいにさ、こう、膜があって……。そこまでは近づかなかったけど、でも空気はありそうだよ。問題はそこまでどうやっていくかなんだけど」

 まだ納得いかないキショウをさておき、双子はどうやってその中に入るかの作戦が立てて始まった。

「水の中でも大丈夫なように、なんかこう……空気の膜をオラたちも張るとか……」

「シン出来るの? 風の扱いはシンの方が出来そうだけど……」

「……いや、そんな技、オラしらねーだ」

「じゃ駄目か。うーん……。あ、湖の水を凍らせて、それを掘る……」

「おお! 名案だべな!!」

「でも時間がものすごくかかるし、僕そこまでの力はないよ」

「……そうだべか……」

「……あ」

 と、そこでシンジがひらめいた。

「水の中に穴を掘るなら、出来るかも……!」

 そういってシンジはさっそく、氷の剣を作り出した。




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