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双子の魔術師と仮面の盗賊  作者: curono
3章 双子、湖で大冒険!
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闇の石の案内書

「ところでお前らは一体こんな山ん中で何してたんだ?」

 一通りキショウは自分の事情を話すと、今度は双子の行動に興味を持ったらしい。雨具を着た二人の姿をまじまじと見て質問を投げかけた。その質問に、シンジが答える前に、シンが待ってましたとばかりに勢い込んで答えた。

「実はオラ達、超古代文明調査隊なんだべ! ペルソナっていう悪者を退治する正義のヒーローなんだべ!」

「…………ヒーローごっこか?」

 シンの返答にキショウが一言返すと、シンが一瞬ずっこけてすぐに言い返す。

「そんなんじゃないだべさ! オラ達はいたって真面目だべよ!!」

「僕たちが勝手に名づけてやってる調査隊なんだ。ホントに超古代文明に関係することを調べてるんだよ。本当に超古代文明があったのかどうかって。で、その調査の邪魔をするペルソナってヤツがいてね、ホント、そいつが悪いヤツでさ! 平気で泥棒していくから……」

 怒るシンをなだめながら、シンジがかいつまんで自分達の活動を説明する。シンジの説明にキショウはしばらく黙って聞いていたが、一通り話を理解するとその小さな顔を軽くゆがめて笑った。こういう表情を見ると、年齢は少なくとも自分達より上なのだろうと双子は思う。

「超古代文明の遺産と、それを狙う盗賊か……。なかなか面白い活動じゃないか」

「お、キショウもオラ達の活動に興味を持っただべか?」

 キショウの反応にシンが身を乗り出すと、キショウは口の端をゆがめて軽く答える。

「まぁな」

「じゃあ、キショウもオラ達の超古代文明探検隊に入らないだべか!?」

「いや、それは遠慮しとく。これでもオレはお前らの年上だぞ。子どもの遊びに付き合ってられるか!」

「えー、ひどい! 僕らは本気でやってるのに!」

 キショウの返答に、シンジもほほを膨らませると、キショウは軽く鼻を鳴らした。

「オレだって、今は自分の国に帰る手段探しで忙しいんだよ! それに、誰も手伝わないとは言ってないだろ」

 予想外の返答に、双子が怒るのを忘れて一瞬目をぱちくりさせる。

「だから、お前らの手伝いをしてやろうっていってんだよ。……ちょっとだけだがな!」

 双子が沈黙するので、キショウはちょっと恥ずかしそうにそう説明する。その言葉に途端とたん双子の表情が一気に明るくなる。

「ホントだべか!」

「何だかんだ言って、やっぱりキショウ、いいヤツだね!」

 双子の素直な反応に、キショウは怒ったように言葉を続ける。

「あくまで手伝いだ。オレはその探検隊とやらには入らんからな。一応命の恩人だからな、その礼だ」

 ちょっとほおを赤らめて、小鬼はぶっきらぼうにそんなことを言う。その言葉に双子はまたも無邪気に喜ぶ。あまり褒められると照れるのか、さっさと話を進めようと、キショウはその小さな指でシンジの持っている本を指差して問う。

「さっそく聞くが、お前ら、超古代文明の何を探してるんだ? その本にある闇の石か?」

 双子が説明するよりも早くキショウが言い当てると、双子はまたも目をぱちくりさせて沈黙する。その様子は、キショウにとって予想外だったらしい。双子のその反応に、今度はキショウの動きが止まる。

「……な、なんだよ。違うのか?」

「え、いや、違わないよ! でも……僕らまだ何もキショウに話してないのに……」

「どうしてわかっただべ?」

 双子の問いに、キショウは何を当たり前のことをと言わんばかりに、あごでシンジの手に抱きかかえられている本を指しながら言う。

「本見りゃ分かるだろ。でかでかとタイトルに『闇の石の地図』と書かれてたらイヤでも読んじまうだろ」

「ええ~!!!!」

「き、キショウ、この本読めるだべか~!?」

「はぁ?」

 双子が興奮気味に詰め寄ると、キショウはますます困惑こんわくした表情で双子を見る。

「な、何だよ、読めちゃ悪いか……? っていうかいくら闇族でもな、文字くらいは……」

「そうじゃないだべよ! キショウ、この超古代文字が読めるだべか!?」

「……あ?……お、おう……」

 キショウの声をさえぎって、シンが質問を投げかけると、小鬼は目をぱちくりさせてうなずいた。

「すごーい!! 超古代文字が読めるだなんて!!」

 その答えに、シンジが大声で叫ぶと、シンもキショウの小さな手を指先でつまみながら跳びはねた。

「すげーだべ! すげーだべ!! こっちの国では超古代文字を読めるヤツはいないだべ!! オラ達の学校の校長のじっちゃんでも読めないだべよ!!」

 双子のその反応に、キショウはしばらくぽかんとしていたが、ふと思い出したようにつぶやいた。

「あ、あぁそうか。超古代文字を知っている種族は少ないんだったっけな。オレも全部が読めるわけじゃないが、確かに特殊とくしゅなヤツしか知らないもんな。てことはお前ら、その本使いこなせてないのか?……いや、その前に読めてないんじゃ使い方もわからないんじゃねぇか?」

 キショウの言葉に双子はこくりとうなずく。

「でも使い方はちょっとだけ知ってるだべよ」

 シンがそういうと、シンジもうなずいて、本のちょうど真ん中を開く。双子には見慣れているあの古い魔法陣だ。シンジはその魔法陣に向かって例の呪文を唱えた。

『クワエロ!』

 呪文に反応して魔法陣は光りだした。魔法陣の周りに描かれた闇の石の絵もくるくると回りだすが、やはりその石の絵は輝かない。

「ほう……。やっぱり地図として使える本なのか。何だ、お前らずいぶん使い方がわかってるじゃないか」

 本の様子を眺めていたキショウは、感心したように言う。

「でも問題はこの先だべさ」

「地図として使えるのはわかったんだけど、次に探し出したい闇の石まで反応してくれないんだ」

 キショウの言葉に双子が顔を曇らせて言うと、キショウはふわふわと飛びながらシンジの肩まで移動する。そしてその肩の上に乗っかったまま、本をのぞき込む。

「……面白い本だな。今の魔法の仕組みとは違うだろ」

「うん。全く違っていて読めないって、校長先生も言ってた」

 そんなやりとりをしている間にも、キショウはその本の文章を目で追っていた。

「…………。…………。…………」

 ブツブツとキショウのつぶやく声がかすかにシンの耳にも届く。雨音と同じくらいの小さな声に、思わずシンが話しかけようとした直後、キショウが一息ついて、大きく息を吸い込んだ。

『ラトゥス』

 キショウがはっきりと声を発する。その言葉に本が反応を示した。白く輝いていた魔法陣内の地図が、急に小さくなったのだ。正確に言えば、地図の表す範囲が広範囲にわたり、小さく見えたのだ。思わず双子が声を上げると、キショウはそれに構わず次の声を発した。

『アルトゥム』

 すると、その地図がまるで浮かび上がるかのように、立体的な映像が円の中に浮かび上がった。今までは表面的な図しか見えなかったが、山の高さや公園の平地の様子などが一目で分かるような絵になったのだ。

「すごーい! こんな使い方が出来るの~!?」

 思わずシンジが叫ぶと、キショウも肩の上でうなずきながら軽く安堵あんどのため息をつく。いくら文字が読めるとは言っても、反応が出るかどうかは、キショウも不安だったのだろう。

「地図の使い方は、すぐそこに書かれているからな。超古代文字さえ読めれば簡単に使いこなせる。ホラ、石の反応が出たぜ」

 キショウの言うとおり、魔法陣の周りに描かれていた闇の石の図が光り輝いていた。久しぶりの反応に、双子はまたもはしゃぎだす。

「石が光ってる~! どうして? 今までは反応でなかったのに!」

「地表の地図で探したからだろ。ま、もしかしたら遠かったって事もあるかもしれんが、一番は地下まで調べる範囲を広げたからじゃないのか」

 シンジの問いに、キショウはわりと冷静に答える。その横で、シンも興奮を抑えきれずに鼻息荒く本をのぞき込んでいる。

「久しぶりだべな! 石の反応が出たのは……って、おおっ! これ二つ反応が出てるだべ!」

 シンが石の反応にびっくりして声を大きくする。三人が頭を寄せて本をのぞき込むと、魔法陣の周りに描かれた石が、一つではなく二つ輝いていた。しかも絵の石二つはゆらゆらとゆれ、同じ方向を交互に指し示していた。光る石は青い光と緑色の光だった。

「……どうなってるだ、これ?」

「可能性的には、こりゃ同じ位置に石が二個あると見ていいだろうな」

 シンの問いかけに、キショウが答える。続けてシンジも顔をあげて問いかける。

「これ、青い光って事は水の属性かな?」

「だと思うだな。でも……緑色の光ってのも気になるだな……」

 シンジの問いに答えるシンの表情は険しい。その表情にシンジもはっとする。

「緑……。もしかしてペルソナが持っていった時計の中の石……?」

「ありえるだな」

 双子は顔を見合わせてうなずいた。

「さっそく行ってみるだべよ!」

 シンは傘を差し、シンジの指差す方向へと歩き出した。シンジの肩に乗っていたキショウは飛び上がって、シンの頭の上に乗る。シンジは本に透明な布をかけ、雨具の帽子をかぶり兄に続いた。




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