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双子の魔術師と仮面の盗賊  作者: curono
2章 双子とあやしいお兄さん

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対戦、盗賊の部下

 どうやらシンジの放った水魔法の水流が切れたらしい。構える双子の前で、デルタは立ち上がって構えた。

「……ち、氷だけじゃなくて水も使うのかよ!! 思った以上にやるな……」

 全身ずぶ濡れではあるが、たいしたダメージにはなっていないようだ。デルタの表情には余裕があった。それを見てシンがニヤリと笑う。

「見かけどおり、体力には自信ありそうだべな!」

「まぁな。しかし、てめーら、余裕そうだな。このオレ相手に……。オレ様の邪魔をするとなれば、例え子どもであっても容赦しないぜ? 一応、術師のようだしな」

 デルタはその赤い目で双子をにらみ笑う。もともときつめの印象を与える鋭い眼光。それを鋭く刺すように、二人をにらみつけてきた。大の大人が何の手加減もなしに気迫で圧をかけてくる。普通の子どもならこの気迫で負けていてもおかしくないが、その点二人は違った。双子は目の前の敵にはまず気迫では負けようとしない。二人は負けじとにらみ返した。

「へへっ……ガキの割にはいい目をしてるな」

 双子の目に気が付いたデルタが、心なしか嬉しそうに言う。

「が、それはオレも手加減しないって事だからな! 後悔すんなよ!!」

 言うが早いがデルタはそのままひざまずくようにしゃがみこみ、地面に手を当てて叫んだ。

『破!!』

 その途端、彼の手の部分の床が激しい衝撃でも食らったかのようにくだけた。双子が驚く間もなく、そのままデルタは次の術を発動する。

『操!!』

 すると、くだけた床の残骸ざんがいが、デルタの腕の周りに集結する。まるでそれは、デルタの腕が数倍に膨れ上がったかのように見えた。その様子に二人が目を奪われていると、デルタはそこでニヤリと笑った。と、同時に勢いよく二人の上空に跳び上がっていた。

 ――速い!!

 双子はとっさに後方に飛び退いた。そして次の瞬間には、彼らのいた足元には、デルタの両腕にくっついた巨大な瓦礫がれきかたまりが突撃していた。地響きのような音を立て、その床は崩れ落ちてしまった。

 敵の身体能力はかなり高い。動きを追うのがやっとのスピードで攻撃を仕掛けてくるのだ。しかもただこぶしで殴りつけてくるわけではない。魔法とはまた違う特殊な術で物を破壊し、それを武器として攻撃してくるのだ。物理的に考えて、とてもじゃないが真っ向からは戦えない。

「なんて術だべ!」

 後方に着地すると同時に、驚きともあきれともとれる声でシンが叫んだ。気付けばその足元の様子がおかしい。やたらとぐらついているのだ。

「やばっ!! シン、これ……!」

「崩れるだな!?」

 二人が察知するや否や、二人の足元の床がガラガラと崩れ落ちた。シンはすばやく飛翔の術で宙に浮き、よろめくシンジの腕を取る。途端、二人の足元はそのまま三階につながってしまった。

「半端じゃない攻撃力だね……!こりゃまともに食らえないよ!!」

 シンの腕にぶら下がったシンジが、くだけた足元を見て目を丸くする。双子はそのままつながった三階に着地した。案の定、その三階には瓦礫が積み上がり、その上ではデルタが不敵な笑みを浮かべて立っていた。

「ま、よくかわせたな。今度はオレが褒めてやるよ。オメデトウ」

「むむっ、挑発してるだべな! これくらい余裕だべ!!」

 デルタの挑発に思わずシンが怒りの表情をあらわにするが、いつものシンの(無意識の)挑発と比べたらかわいいもんだとシンジは内心思う。

「だが、よけてばかりじゃオレには勝てないぜっ!! ――『操!!』」

 またも呪文と共に、デルタの腕に瓦礫が集結する。双子はそれを見てすばやく身構えた。

「いくぜっ!!」

 間髪いれずデルタは再び攻撃を仕掛けてきた。今度は上空からではない。二人の正面に突っ込んできたのだ。呪文発動の暇もない。シンは飛翔の術のおかげで風に乗って衝撃波から発生する風の流れに沿ってそれを交わすが、シンジにはそれは出来ない。正面から突撃してきた敵の攻撃を、無謀むぼうにもその氷の剣で逆に突っ込んできた。

 金属がこすれるような甲高い音がして、シンジの氷の剣とデルタの瓦礫のこぶしがぶつかり合った。

「シンジ!!」

 攻撃をかわしたシンは、デルタの後方に着地した。それと同時に振り返ると、シンジはその身体の大きさにもかかわらず、剣の刃先でこぶしの中心点を押さえていた。氷の剣は、普通の氷とはわけが違う。通常の氷に魔力を練り合わせ作られる魔法の剣なのだ。簡単に折れる代物ではない。その剣と、同様に敵の魔力によって作られたこぶしの、まさに力と力の正面衝突である。見ればシンジの足元が凍っている。とてもシンジの体重ではデルタの攻撃を止めることは出来ない。衝突と同時に一気に冷気を放出して自分の身体を固定し、衝撃に耐えたわけだ。これなら確かに吹き飛ばされる事はない。しかしその分の負荷ふかは当然シンジの身体に跳ね返ってくる。

「ガキのくせに、このオレの攻撃を正面から受け止めるとはいい度胸だ!」

「それほどでもっ!」

 体制不利の割りに口調はシン同様生意気に笑う。

「だが、力比べでは負けねぇぜ!!」

と、デルタがそのこぶしに力を入れると、相対するシンジがキッと表情を険しくした。

水柱スイチュウ!!』

 向かい合った体制のまま、シンジが魔法を放つ。しかし今度は不意打ちでない分、デルタの体勢は微塵みじんも動かなかった。デルタは目の前の少年に対して声を上げて笑った。

「さっきは油断してたからな! こんな水攻撃くらいで倒れねえよ!!」

 しかし、今度は笑ったのはシンジの方だった。

「かかったね……!」

「何……!?」

 シンジの発言にデルタが一瞬眉をゆがめると、シンジは立て続けに呪文を唱えた。

氷刃ヒョウジン!!』

 たちまち、シンジの氷の剣の先からすさまじい冷気が吹きつけた。ずぶ濡れになったデルタの身体は、その瓦礫のこぶしごと一瞬で氷付けになる。

「ぐああああっ!」

 凍結する痛みにデルタが叫び声をあげるが、それも氷に飲み込まれた。全身が氷付けになると、衝突の力も弱まったらしい。こぶしとの接点になっていた剣はその魔法発動と同時にくだけ散り、シンジの周りを覆っていた氷も霧のように消え失せた。シンジはそのままへなへなと床に座り込む。さすがに魔力を酷使しすぎたのだ。

「大丈夫だべか!?」

 心配してシンが駆け寄るが、シンジはその疲れきった体制の割りに表情は険しい。

「シン、すぐ来るよ!!」

 駆け寄ろうとするシンを制するようにシンジが声を上げた直後、氷付けになったデルタは絶叫と共に、その氷のからを粉砕した。

「いってーーーッ!! ちくしょう!! よくもやりやがったなっ!!!!」

 氷から出てくるや否や、怒りと冷たさで顔を真っ赤にしてデルタが叫ぶ。シンジは何とか立ち上がり、後方に跳び上がって間合いを取る。

「ガキだからって、さすがにちょっと許さねーぞ!!」

「そっちだって遠慮しないって言ったじゃないか!! 文句言われる筋合いないよ!!」

 デルタの発言に、ほほを膨らませてシンジも負けじと言い返す。

「むしろ大人のおめーにあわせてオラ達が戦ってるんだから、ちょうど二対一でいいくらいだべさ!」

 デルタの後方から、シンも抗議する。見れば短剣を腰に差し、邪魔にならないようにしながら、その両腕を胸の前でかざし呪文を唱える。

火焔カエン!!』

 たちまち、シンの得意技、燃え盛る炎の玉が、シンの手の中に発生する。

「さぁ、次はオラの番だべよ!! 覚悟するだよ!!」

「けっ、水攻めの次は火攻めかよ。……いやいやいや、食らうつもりはまったくないがな!!」

 シンの言葉に一瞬嫌そうな表情をしたデルタだったが、すぐに気を取り直すと、再びそのこぶしを振り上げて、今度はシンに向かって突進して来た。それを見て、シンはまたかわそうと構えるが――

「甘いぜ!!『破!!』」

 予想外だった。突っ込んでくると思ったその巨大なこぶしは、当たる直前に爆発するようにくだけ散った。最初の攻撃を逆発動した形だ。直線状の攻撃と思ったら、こぶしを中心に爆発状の攻撃、さすがのシンも読めなかったようで、かわすスピードが落ちる。

「もらったぁ!!」

 その隙をデルタは逃さなかった。

『操!!』

 今度は逆の左手で『操』の術を使い、空中のシンに叩きつけるように振り下ろしてきたが……!

「はっ!!」

 こぶしがあたるより速く、シンの手から炎が投げつけられる。相手が攻撃を仕掛けた瞬間に間合いに入ったシンも、そのチャンスを逃さなかった。がら空きの胴体に炎が直撃、若干濡れていたからよいものの、さすがに焼ける痛みにはデルタも顔を歪める。と同時にこぶしの着地点もずれ、寸でのところでシンはそれをかわす。

「……あっぶねーだ!!」

 なんてのん気にかわすが、行動は速い。次の瞬間には胸の魔鉱石に手をかざし、呪文を唱え宙に舞う。

 その時だった。

 シンは胸の魔鉱石の力が異様に強くなっているのを感じた。別に自分が強くなったわけではない。しかし、空気を動かす「風」の波動――それが強くなっているのだ。

「まさか……」

 シンがふと腰にかけた短剣を見つめたその時だ。

「油断する暇はないぜぇええッッ!!!!」

 シンの上空にデルタが跳び上がっていた。




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