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双子の魔術師と仮面の盗賊  作者: curono
2章 双子とあやしいお兄さん

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強さへのあこがれ

「…………」

「…………」

「………………」

「……何か、しゃべろうよ~……」

 気持ちのいい青空の下、いつものようにシン、シンジ、ヨウサ、ガイの四人組はお弁当を広げ、楽しくお昼休み……のはずだった。しかしいつもの明るさはどこへやら。なんとも重たい空気が四人の上にのしかかっていた。

「……い、いったい何に怒っているだべか……?」

「わ、わかんない……。いつもこんな風になるの? 怒ると?」

 コソコソと双子が顔をあわせて視線を交わす。二人がそっと後ろを向くと、ピンクの柔らかな髪を風になでられながら、草の上に座っている少女がいる。双子の友達のヨウサだ。短めの白っぽいワンピースに長いロングブーツ、エメラルド色の大きな瞳に小さな鼻と口。色白のその手にはサンドイッチを持ち、一人でもくもくとそれをほおばる。

 その様子だけを言えばかわいらしいが、この重たい空気の原因は彼女である。明らかに不機嫌極まりない顔で、まゆを寄せ、じっと双子をにらんでいるのである。無言のままじーっとにらまれたら、気持ちのいいものではない。しかも怖いのはヨウサのその特異体質だ。

「よ、ヨウサちゃん、ちょっとお話を……」

 バンダナ頭のガイが声をかけると、ヨウサはキッとガイをにらみつける。

 ばちっ!!

 と、同時にヨウサの周りに静電気が走る。触ると痛いその電気は、ヨウサから発せられているのだ。過去にその静電気に当てられているガイは、その電気を見た途端、ひぃッと小さく悲鳴を上げて後じさる。その様子に赤髪のシンもこわごわと視線を彼女から外す。

「……明らかにご機嫌ナナメだべ……」

「怒ると電気が出てくるんだね……。なんでシンとガイがそんなに恐れるのか、ようやく分かったよ……」

 どうやら、ヨウサのお怒りに始めて触れるらしいシンジは、納得言ったといった様子で神妙な表情をしている。

 ヨウサの様子がおかしいのは、今日一日ずっとだ。謎の盗賊、ペルソナと対戦する大事件があったのはもう二日も前の話。その事件の翌日は、身体を休めることに専念していた。だから彼らが改めて顔をあわせたのは、事件の翌々日の今日。本当なら、ペルソナのことに関して、早く四人で作戦会議もしたいのだが、ヨウサがこの調子なので、まったく会話にならないのである。

「とはいえ、さすがにこのままでは話にならないよね……」

「そうだべな……。なんとかヨウサの怒りを治めないとだべ……」

 シンとシンジの双子が意を決したように顔を合わせうなずくと、思いっきりの作り笑いでヨウサに微笑んだ。

「や、やぁ、よ、ヨウサちゃん!」

「ご機嫌いかがだべ!?」

 しばしの沈黙。

「……いいわけあるかぁ~ッ!!!!」

 ――逆効果だったらしい。

 パリパリパリと小さな静電気の音がしたのもつかの間、次の瞬間大太鼓を叩いたかのような音が響いて、特大の静電気がヨウサの周りに発生した。小さい静電気なら、当たってもちくりと痛いだけだが、これだけ大きいとダメージも半端でない。

「あだだだだ!!」

「いてててて!!」

「なんでボクまでぇ~!?」

 バチバチ全身叩かれたような痛みと共に、三人がぎゃいぎゃい悲鳴を上げる。静電気が収まると、三人はへなへなとその場に座り込んだ。

 一方で怒り爆発できたヨウサは、すっきりっした表情で大きく息を吸い込んだ。

「……はぁ……。…………ちょっとすっきりした!」

 なんて笑顔で言うが、とばっちりを食らった三人にしてみれば多大な迷惑である。

「……いだだ……。一体なんなんだべ、ヨウサ! 何もそんな怒る必要ないだべさ!」

 復活したシンが勢いよく立ち上がりヨウサに詰め寄る。しかしその頭は先ほどの静電気で爆発状態。表情と見た目のギャップに、ヨウサが思わずふきだした。

「ぷっ……。シンくんてばすごい頭……あはははは!」

「笑うでねーだ!! ヨウサのせいだべよ!!」

 そう言いながら、シンは髪をいじり決まり悪そうに口をとがらす。その言葉にヨウサは片手をシンに向けて謝るが、笑いは治まりそうにない。

「ごめんごめん、だって……あはははは!」

「でもよかった。ヨウサちゃんやっと笑った」

 笑い転げるヨウサと、怒っているシンの間で、シンジも笑顔で立ち上がった。シンジの方は髪質なのか、大して爆発頭にもならなかったようだ。それでも自分の髪を整えつつ、質問を投げかける。

「でもホント、ヨウサちゃん、一体何に怒ってたの? なんか僕達、悪いことした?」

 シンジが問うと、ヨウサは笑いをこらえながら、シンジを見て、そして大きく息を吸って言葉を吐いた。

「……だってさ、シンくんもシンジくんも……ガイくんだってずるいんだもん」

「へ?」

 予想外な彼女の言葉に三人は目を丸くする。

「だって、三人とも、すごい力をもってるんだもん。あのペルソナに向かって、すごい攻撃を二人ともしてるしさ。ガイくんだって、なんだかいろんな術を使えるし……。なんか、ずるいなって」

「…………」

 思ってもいないことだった。まさか、そんなことをヨウサが思っていたとは。シンもシンジも何も言い出せなかった。何と答えていいか分からなかったのだ。

 日常生活では四人とも立ち位置は同等だった。勉強や魔法の出来、不出来だけでない。遊んでいる時だって、四人の関係は同等だったのだ。それが、ペルソナの一件でバランスが崩れた。いや、シンもシンジもガイも、そんな思いは微塵みじんも感じなかっただろう。でも、ヨウサは違った。自分以外の三人は、自分にはない特殊能力を持っていた。自分だけ彼らと違う。彼らには届かないのではないか……。そんな漠然とした不安から、ヨウサはどうしていいか分からず、不機嫌であったのだろう。

「……何もずるくないだべよ。その……オラ達はもともとそういう修行を受けてたんだべ。だからその……」

「でも、私はうけてないもん。二人とも強いのが、羨ましい」

 しどろもどろに答えるシンに、ヨウサが唇をとがらせて言い返す。シンジも考え込んで無言でいると、

「じゃ、ヨウサちゃんも特訓してみたら~?」

と、予想外にガイがむくりと起き出して口をはさんだ。 

「へ?」

「特訓?」

 唐突な答えに、シンもヨウサも目をぱちくりさせて問い返す。先ほどの静電気でガイは爆発する頭をしていないので、体についた砂ぼこりを払いながら立ち上がり、言葉を続けた。

「シンやシンジは、学校入学するまで、修行してたわけでしょ~? だから、属性に合った攻撃魔法もうまく使えるわけだしさ~。ボクだって、ウリュウ家は代々ああいった呪術を練習させられるから出来るだけだしね~」

「へぇ~、ガイも練習してたんだ。僕達と一緒だね」

 シンジが感心するその隣で、ヨウサが身を乗り出す。

「ちょっと待って、ホント? 私も特訓すれば、シンくん達みたいになれるの?」

「そうだべよ、ガイ、ちょっと待つだ。修行するにも、属性とか能力とかを見られただべよ。どんな力を伸ばせるのか、それを調べねーと、オラ達の山でも弟子にはなれなかっただべ」

 今度はシンも口を挟む。もっと聞きたい、言いたいと言いたげな三人を制するように、ガイは両手を広げ、説明を続けた。

「確かに属性とか、種族とか、そういう生まれつきの能力は必要だよ~。シンもシンジも精霊族の血が強い一族でしょ~? 多分精霊族なら、攻撃、補助、召喚とか、種類を選ばず、属性魔法なら使えるようになるはずだよ~。だから生まれ持った能力があれば、ちゃんとした修行をすると、魔法は使えるようになる」

 そこまで言ってガイは、ヨウサを見て、細い目のまぬけ面に似合わない真面目な声で言った。

「ヨウサちゃんのその静電気、それはヨウサちゃんが『雷系』の属性を持ついい証拠だよ~。お父さんかお母さん、精霊族じゃないの~?」

 ガイの問いに、ヨウサはちょっと複雑な表情をした。

「え……。うん……」

 しばしの沈黙。言い出しにくそうにヨウサは三人を見、言葉を続けた。

「……実は分からないの……。うち、お母さんとお兄ちゃんしかいなくて、お父さんが旅に出てて……。お父さんは分からないけど、お母さんはマテリアル族なの……」

「……そっか~……」

 確かにマテリアル種の一族なら、通常魔力を扱える能力は低い。父親のことがよく分からなければ、彼女の能力も今ひとつ分からないのも仕方がないのだ。しかしそれ以上に、意外に複雑な家庭状況を知り、ガイの声色が落ちた。

 しかし予想外にも、シンとシンジがその話に笑顔になった。

「ヨウサちゃんも、お父さんよく分からないんだね」

「オラ達と一緒だべ! オラ達、お父さんもお母さんも分からないだべよ」

「え?」

 ヨウサがびっくりして問い返すと、双子は笑顔で話を続けた。

「僕らも親がよく分からないんだ。多分精霊族なんだと思うけど、僕達自分の親の顔も見たことないもん」

「そうだべな。オラ達の親はあの山のみんなみたいなもんだべからなぁ。お兄ちゃんみたいなのもいるべしな」

「そうそう」

 発言内容の重さと裏腹に、双子の表情は明るい。ケラケラと笑いながら話を続ける二人に、思わずヨウサが問いかける。

「え、ちょっと待って……。二人とも親が分からないって……え、そうなの? もしかして、いわゆるミナシゴってやつ?」

 ヨウサの言葉に、二人は首をかしげて言葉を続ける。

「そんなもんかな。あんまり気にしたことないけど」

「そうだべな。でもコウアは、オラ達は捨てられたんじゃなくて、訳ありでこの山に預けるしかなかったって言ってたべな」

「あ、コウアって、僕達のお母さんみたいな人のことなんだ。とっても美人なんだよ~」

 ――まさか、このいつも明るい双子にそんな重い過去があったとは。

 予想外の話に、ヨウサは先ほどまでの会話を忘れ、黙り込んでしまった。双子はそんなヨウサの気持ちを知るはずもなく、笑顔で家族の話を続けている。

「さておき、で! どうするの~? ヨウサちゃんの特訓は」

 見かねてガイが話を戻す。あわててヨウサは我に返り、双子も話に戻ってくる。

「ボクが見た感じなんだけど、ヨウサちゃんには精霊族の血が流れていると思う。お父さんが相当強い精霊族なのかもしれないね~。いずれにせよ、ヨウサちゃんは、特訓によっては相当な力を身につけられると思うよ~!」

 ガイのその発言に、ヨウサだけでなく双子も顔を輝かせる。

「わたしも……強くなれるんだ!」

「すごーい! 僕ら四人ですっごい強い調査隊の結成だね!」

「超古代文明調査隊は、同時にペルソナの悪事を阻止するチームでもあるだべ!! 女戦士がこれで、メンバーに加わったわけだべな!」

「そうと決まれば、早速動き出さないとだね~!」

 ガイが三人に続けてニヤリと笑った。その不敵な笑みに三人がきょとんとすると、ガイはまたもにやりと笑う。

「特訓するなら、その準備をしないとね~。それに、例の本のこともね~」

 



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