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双子の魔術師と仮面の盗賊  作者: curono
6章 双子と誘拐事件

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不可解な罠


「でたぁ〜〜!!」

「きゃーーっ!!」

「逃げるだーーーっ!」

「言われる前に逃げるわー!」

 全速力で駆けて行く三人の少年少女と一匹の鬼のその背後で、凄まじい轟音ごうおんを立てながら転がってくるのは、巨大な岩のかたまりだった。通路のほとんどを埋めそうな大きさの岩は轟音ごうおんを立てながら通路を震わせ、勢いよく彼らに向かって突進してきていた。

「なんでこう毎回キショウと一緒だとこんな目にうだ!?」

「前回はオレのせいじゃねーだろ!」

 毒づくシンに間髪かんぱつ入れずキショウがつっこむと、ヨウサがシンの手のひらに開かれたままの本を指さしながら叫んだ。

「道を確認しないと! このままじゃ岩につぶされちゃうわ!」

「こんな勢いある岩じゃ、僕の氷でも止められないからねっ!」

 二人の言葉にキショウはワシワシと頭をかくと、シンの手のひらに開かれた本の上に座り込んで叫んだ。

「オレが指示するからその通りに進め! 次の通路でふた手に別れるから……右!」

「わかった!」

 キショウの言うとおり、すぐに通路は二手に別れた。結構急な曲がり角だ。そこを勢いよく三人が曲がり込んで駆けて行く。飛びながらシンはニヤリとつぶやいた。

「これだけの急カーブなら、あの石も来れな……」

「きたぁ〜〜!」

 そんな余裕をかますシンの発言の終わらないうちに、シンジが大声を上げて更にスピードを上げて駆け出した。

「何でよっ! なんであの石が急カーブするわけ!?」

 同じく全力疾走ぜんりょくしっそうしながらヨウサが声を張り上げると、それに構わずキショウは次の指示をする。

「次の道を曲がるぞ! 次は左!」

「今度こそっ!」

 先程よりも急なカーブだ。勢いよくかじを切るように三人がカーブを曲る。何となく嫌な予感がして曲がり角を曲がり終えてもなお、スピードを落とさぬまま三人は駆けていた。すると――

「げげげっ!!」

「またぁ〜っ!!?」

 案の定とでもいうべきか、三人と一匹の嫌な予感は的中して、またあの巨大岩は彼らを追ってきたのだ。神殿を震わすほどの轟音ごうおんは、ますます勢いを上げているように見えた。

 三度、その轟音ごうおんに追われながら三人の全力疾走は続く。

「一体どうなってるんだよっ!」

 半ばキレ気味にシンジが叫ぶと、ヨウサも息も絶え絶えに答える。

「はぁ……はぁっ……どう見てもアレ……っ、私達を追いかけてきてるわ……っ!」

「こりゃ何か仕組みがあるとしか思えんなっ!」

 いらだちげに頭をかくキショウの表情ですら、緊迫きんぱくして険しい表情だ。

「その仕組みを早く解いてくれだ!」

「それができれば苦労しないっての!」

 シンの頼みに一喝いっかつするように答えると、小鬼は後ろを向いて追いかけてくる岩をにらみつけた。必死に駆ける三人の後ろで、岩は猛スピードで転がり落ちてくる。

「岩に何か魔法の仕組みがかかっているのはきっと間違いない……。侵入者の何かに反応しているわけだろ……。熱……魔力……一体何だ……!?」

「もぉ〜! ダメモトでいいから色々やってみる!」

 悩むキショウの言葉を聞いて、とにかく動くしかないと判断したのか、シンジが急に大声を上げた。走るスピードはそのままに、背後に向けて片手を伸ばすと。そのまま呪文を唱えた。

『召喚!水伯スイハク!』

 シンジの手からいきなり現れた大波は、坂道を逆流するように駆け上がり、そのまま転がる大岩に激突、凄まじい水しぶきと共に一瞬だけ岩の転がるスピードを落とす。

 しかし――

 やはり落ちたのはスピードだけで、岩は先程より速度を少し落としてやはりこちらに向かって突進してきていた。

「ちょっとスピード落とすだけだね」

「足止めにもならねーか」

 背後を見ながら舌打ちするキショウと同じように、シンジも悔しげに岩をにらむ。

「じゃあオラも……! 『召喚、炎精エンセイ』!」

 先頭を飛んでいたシンも背後に向き直ると、後ろ向きに飛んだまま、その両手から魔法を発射、岩に炎をお見舞いする。通り過ぎる瞬間、周りの空気を瞬間的に熱くしながら突っ込んでいく炎は、岩にぶつかるとそれを真っ赤に染めた。

 ……が、しかし。

「やっぱり止まらねーだべか……」

 案の定の結果に、悔しげにシンが舌打ちすると、すかさず小鬼がその頭の上で赤髪を叩く。

「止まらねーだ、じゃねぇよ!!」

「岩、真っ赤になって、ますます危なくなっちゃったじゃないか!」

 そうなのだ。スピードが落ちないばかりか、岩は焼いた石のような赤になり、当たった時のダメージは、きっと最初の時よりひどいだろう。万が一当たったりしたら、ひとたまりもない。キショウとシンジのつっこみももっともである。

「余計なことじてんじゃねーよ!!」

「オラは良かれと思ってだべな……」

「ますます悪化だよ!」

 キショウとシンジの双方から叱られて、シンは唇をとがらせている。そんな彼らの背後で、相変わらず巨大岩はますますスピードを上げて迫ってきていた。

「くっそー! こんなことしてる間に次の曲がり道だ!」

「今度はどっちだべ!」

 シンとキショウがそんなやりとりをしている背後で、ヨウサは背後をチラチラ見ながらその両手に力を入れ始めていた。

「はぁ……はぁ……わ、私も試しに……やってみる……!」

 ヨウサの言葉に、隣を走るシンジはまた両手に魔法準備をしながらうなずいていた。

「ヨウサちゃんの魔法は雷系だから、岩に効果があるとはあまり思えないけど、でも、もしかしたら可能性はあるからね!」

 その言葉にヨウサはうなずきながら、後ろに向けて両手を向けた。一瞬だけ後ろを見、ヨウサは呪文を唱えようと息を吸った。

「次は右行くぞ!」

雷甲ライコウ!』

 キショウの指示とほぼ同時に、ヨウサが魔法を発動したその直後だった。勢いよく右に曲がる彼らのその背後で、急にあの轟音ごうおんが止まったように聞こえたのだ。

「……へっ……?」

 思いがけない反応に、思わずシンとシンジは顔を見合わせた。

「……音……止まってない……?」

 全速力で走っていたその足を止め、シンジがつぶやくと、先頭のシンも飛ぶのをやめて床に足をついた。ヨウサもシンの隣で足を止めると――

 荒い三人の呼吸の音が響く以外、背後からの音は完全に止まってしまっていた。

「……え……来ない……?」

「……来ない……わね……」

「……どういうことだべ……?」

 思わず顔を見合わせる三人に、キショウは一息ついてすぐにシンの髪を引っ張りながら指示を出す。

「何か知らねーが、きっとあの雷攻撃が効いたんだろ。さっさと次の道行くぞ! またいつ罠が動き出すかわからねぇからな。今のうちに進むぞ」

 その言葉に、三人は背後を見ながらひとまず先に進みだした。

「次の階層への近道探すか……えっと……」

 ブツブツ言いながら道を急いで探すキショウのかたわら、三人は首をかしげるのだった。

「運が良かったといえばそうなんだけど……」

「……なんか……腑に落ちねぇだべな」

「……あら……?」

 首をかしげながら話し合う双子の背後で、ヨウサは耳を押さえて辺りを見回していた。

「あの音が消えてる……」

 彼女にしか聞こえていなかった音なのだが、気がつけばなくなっていた。音の出処でどころを探るように見回しているヨウサだったが――

「ヨウサ、何してるだ〜? 先に進むだべよ〜」

 先に進んでいたシンが気付いてヨウサに声をかけると、少女ははっとしたように振り向いて返事をした。

「わかってる、今行くー」

 言いながらヨウサは駆け出し、耳を押さえて、また音が聞こえないかと聞き耳を立てていた。

「……うっすらとだけど……まだ小さく聞こえる……。でも一体どこから……?」

 自問自答する少女の背後で、茶色の壁はゆらゆらと、青白い光を変わらずゆらめかせていた。




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