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双子の魔術師と仮面の盗賊  作者: curono
1章 双子と仮面の盗賊
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はじまり

「このお話を開いてくれたみなさまへ」


ワクワクしたいなぁ……と思って、退屈しがちな妹のために書き溜めたお話です。

冒険ごっこが大好きで、ハラハラワクワクしたい気持ちで書きました。


童話のジャンルを選んでいますが、正確には童話ではありません。

ただ、小学生向けに書いたつもりなので、こちらを選んでいます。


見慣れない世界のお話で、困惑するかもしれません。

それでも、少しでもハラハラワクワクしてもらえたなら幸いです。


――Curono










世界は、生まれてから何度も破壊と再生を繰り返してきた。


生まれては育ち、

育っては消え、

癒えてはまた生まれ、

多くの生けるものが存在してきた。


時代は流れ、進化を繰り返したその世界は、古来の神々にこう呼ばれた。


 女神の大地「アルカタ」


ここは多くの種族が生き、魔法にあふれた世界である。











「朧朧真如」

第1部 双子の魔術師と仮面の盗賊











『神の石の詩』


「神無き時代

 混沌ありき 光と闇の偉大いだいな石が

 神なる力 全てを統べる

 手に入れしもの 創神となる


 世界はそこで終焉しゅうえんとなる

 命あるもの すべて消えて」











*****


「大荷物を持って、旅行ですかな」

 急に声をかけられて、少年はふり向いた。後ろにいたのは、大きな老木ろうぼくのような老人だった。だがそれは例えではない。本当に大きな枝を折り曲げるように体の前に出し、黒いつえを両手で持って切り株に座っているのは、本当に老木ろうぼくだ。年季ねんきの入ったでこぼこの木の肌、そこの木の模様のようにみえる細く閉じられた目、そしてシワ。

 少年に話しかけたのは、そんな老木だった。

 しかし、少年はそれに驚くこともなくニッコリと笑って答えた。

「旅行じゃないんです。これから学校に行くんです」

 そう言って荷物をよいしょ、と足元に置く少年は、まるで水のようにきれいな青い髪をしていた。

「学校……はて、このあたりに学校はなかったと思うがのう」

 言いながら、老木のおじいさんの顔のような部分の下から、木が曲がる。どうやらそこが首らしい。おじいさんの動きに合わせ、顔のような部分の上に伸びる枝からようやく生え始めた春の新緑がサワサワと鳴った。

 そんな様子を眺め、少年は春の訪れを感じながらほほえんだ。何と言っても、少年にとって待ちわびた春なのだ。

「ここらへんじゃないんです。遠くの南にある、セイランってとこの学校なんです」

 少年が答えると、老木のおじいさんはその細い目を初めて開いた。緑色の優しそうな目が驚いたように見えた。

「ほう、あの魔術学校として有名なセイラン魔術学校か……。おまいさん、やるのう」

 おじいさんのほめ言葉に、少年は嬉しそうに笑った。

「本当は去年行くはずだったけど、遅くなっちゃって……。ようやく今年いけるんです」

 その言葉に、老木が小刻こきざみにふるえ、木々が鳴るように老人は笑った。

「そうかそうか、それでは待ち遠しかったのう。あそこはみんなの憧れじゃ。しっかり学んでくるのじゃぞ」

「はい! じゃあ、僕、行きます」

 老人にそう言って一礼すると、青い髪の少年はまた荷物を持ち直し、やる気に満ちた表情で歩きだした。


 少年の進む先には、広い原っぱが見えた。その原っぱの中心に奇妙きみょうな丸い物体が少年を待つようにたたずんでいた。ただの丸い物体に見えるが、飛ぶ時にはまるで虫のようにつばさを出す、飛行船だった。

「あれが飛行船か……」

ポツリつぶやく少年の顔には、一瞬不安そうな色が浮かんだ。しかしそれは本当に一瞬だった。

「セイランの町、か……。――よぉし!」

 息を吸い、決意を込めるようにそう言うと、少年は迷いなく原っぱの中へずんずんと進んでいった。





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