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夢は俺の中に  作者: 創造 一輝
第四部
4/4

夢は希望を


5.君と俺と


 遠くの方に桜が見えてきた。

だが、身体状況がおかしいせいか、桜が歪んで見える。

思わず倒れそうになった時、俺の好きな声が聞こえた。

「大丈夫?一回落ち着いて座って」

宮本はそう言って、俺をゆっくりと座らせてくれた。

 何故か、俺は宮本の優しさ、そして何より宮本が無事だったことを心から喜び、喜悦の声を挙げた。

そのまま俺は宮本の肩を強く揺すり

「宮本……無事だったんだな。本当によかった……」

泣きじゃくった。

宮本は最初とても心配そうにまた、怪訝そうな表情をしていたが、次第に名前通りの笑みに代わり、俺を優しく抱きしめてくれた。

 宮本のいい匂いがした。

 俺が泣きやみ、宮本が「じゃあ、また明日ね」と明るい声で言ってきた時、俺の中で何かが吹っ切れた。

「宮本……!俺はお前が好きだ。本当に……」

告白してしまったのだ。

流石にやばかったかと感じたが、宮本は先程以上に名前通りの笑みを浮かべ、涙を流していた……

 俺達はそのまま別々の方向に歩き、宮本の姿が見えなくなったところで俺は改めて安堵した。

宮本が無事で本当に良かったと。

家の前まできた時、何かが引っ掛かった。

何か忘れているのでないか、考え違えていないか、色々なことが頭を巡りに巡った。

 その時、俺は思わず口があんぐりと開き、身体の震えを止めることが出来なかった。

よく考えたら、夢が示唆していたのは、俺と宮本が別々の道を歩き出した後かもしれないのだ。

その事をすっかりと忘れていた。

ということは……。

宮本が危ない……!

 俺は闇雲に走った。

だが、やはり神様はいつまでも俺の味方はしてくれなかった。

膝からガクッと力が抜け、地面に倒れてしまった。

もう身体中が限界だった。

きっとこれ程の痛みはまだ先が長い人生で経験することはないだろう。

だが、ここでみすみす倒れる訳にはいかなかった。

自分より、宮本を守りたい……

俺はその一心で立ち上がった。

 以前、勝に言われたことがあった。

『お前はとても正義感が強いから、警察官とかに向いてるよな!』

こう言ってくれた。

今、それを出すべきではないか。

いや、出さなければいけない。

そう感じた。

 俺はまた思い切り走り出した。

これが人間の馬鹿力というものだろうか。

もう既によくわからない。

「宮本ーー!待ってろ!」

遠くに見える桜に叫んだ。

視界が歪み良く見えないが、二人の女子がたっているように見える。

 桜の前に何とかたどり着き、もう既に宮本のすぐ背後に迫っている竹本に俺は叫んだ。

「竹本……お前の計画通りには絶対にさせねぇ」

俺は叫んだつもりだったが、極度の疲労のせいか、呟く程度になってしまった。

だが、竹本には届いたようだ。

「え……上野くん……何でここにいるの」

竹本はとても驚愕しているようだ。

 その時、宮本もさっと後ろを向き、竹本がいることに気がついたようだ。

宮本は竹本とは違い恐怖の色を浮かべた。

「そんなことはどうでもいい。それより、お前今宮本に何しようとした」

依然、顔色を変えず、竹本は俺に返答した。

「特に何もしようとしてないわよ。ちょっと話したいなって思っただけ」

そう惚けたが、俺にはもう分かりきっていた。

「この状況を見て、話したがっているだけに見えるわけがねぇだろ。いい加減、諦めろ」

俺は強く睨んだ。

 そうすると、竹本は嘲笑うかのような笑みを浮かべ、よくアニメなどの悪役女王が発する声を出した。そして、

「あなた達がイチャイチャしあってるから、ムカついたのよ。それで、これを思いついたの。そうすれば、あなたが私の方を向いてくれるんじゃないかなってね」

俺は思わず顔が引き攣った。

怒りに震え、俺は渾身の力で竹本に殴りかかった。

竹本を数メートル飛ばした。

 そのうちに俺は宮本の手を掴み、逃げた。

背中から何か竹本が叫んでいたようだったが、聞き取れなかった。


エピローグ


 あの出来事は今でも何回か思い出す。

もう五年前の話だ。

だが、俺はあの出来事がきっかけで宮本と付き合うことが出来た。

しかし、一方で親友を一人失った。

勝だ。

竹本を殴ってしまったことで、勝の俺に対する恨みは更に膨らみ、話すことすらなくなってしまった。

 今現在、高校で沢山の友人はできたが、やはりあれほど気が合うやつはいない。

そんなことを考えながら、学校の準備をしていた時、家中にピンポーンという呼び出し音が鳴り響いた。

俺は知らぬ間に笑みが零れた。

 親が出ようとしたが、それを俺が制し、俺自身が出た。

「あ、友ちゃん!一緒に学校行こう」

笑美が家まで迎えに来てくれた。

俺がいつも寝坊気味だからだ。

 しかも、今日は高校の進級式なのだ。

小学校の時のように朝っぱらから急ぎたくないため、笑美に起こしに来てもらっている。

「おう!行こう」

俺はそう言って、笑美と隣合って学校への道のりを歩いた。

「同じクラスになれたらいいな」

俺はそんなことをぼそっと言ったが、笑美は相変わらず地獄耳だ。

「そうだね!」

と普通に返してきた。

他のやつなら聞こえないはずなのだが。

 学校は比較的近いため、すぐ着いた。

俺は笑美と手を繋ぎ、希望を胸に校門を超えた。

 その刹那、何かとても嫌な視線を感じ、俺は瞬間的に後ろを振り返った。

誰もいなかった。

しかし、何か男と女が共に物陰に隠れたような気がした。

そのシルエットがなにか引っかかり考えようとしたが、それを笑美に制されてしまった。

「どうしたの?早く行こうよ」

笑美は怪訝そうな表情を浮かべた。

「あぁ。すまん。行こうか」

なるべく笑顔を心がけたが引き攣った笑顔になってしまっただろう。

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