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3、こんな時代

 開いた扉の先の光景に、眼を疑った。


 ちょうど昨日まで死体だと思っていた女が起き上がり、部屋の中をフラフラと歩いていたのだ。


 彼女は眩しそうに眼を細めながら、こちらを見ていた。


 「あなた、誰?」


 彼女からの急な問いかけに、返答に詰まった。状況に、思考が追い付いていなかったのだ。


 「……、まぁ、いいわ」


 そう言い、覚束ない足取りで部屋を出ようとする彼女は、扉の向こうを見るや立ち止まった。


 「……、なに、これ?」


 怖いものでも見たように、振り返った彼女の声は震えていた。廊下の先の窓にはいつも通り、荒廃し切った街が広がっている。


 「なにって、あんた、ずっとここにいたんじゃないのか?」


 今まで何度もここに足を運んですでに知っていたことを、俺は彼女に尋ねていた。


 言うには、彼女は難しい病気で入院していたのだそうだ。そして、その治療を受けるため麻酔で眠り、眼が覚めたらここにいたのだと。


 言われてみれば、確かにこの廃墟は病院のようだった。それと解る器具もベッドすらも残されてはいなかったが、間取りを見ると、確かにそんな雰囲気は残っている。


 そこらに転がっている死体の多さにも納得がいった。恐らく、ここの入院患者たちのものだったのだ。


 こんな時代だ。使えそうなものは全て持ち去られてしまったのだろう。かく言う俺も、初めてここに来たのはそういう物資を集めるためだった。


 まともじゃ、生きていけない。


 そう、あの時。ちょうどこの隣街に爆弾が落とされたあの日からは。

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