第三話 入学式
合格の通知が来てから1ヶ月がたち今日はついに入学式となった。
入学式は午後からということもあり、朝早くトクソ領をでた俺は余裕を持って学校に着くことができた。
周りの新入生の多くは両親と一緒にいるなか俺は1人でいた。
というのも入学式に父さんを連れてくると必ず暴走してしまうだろうし、母さんだけ連れてくると父さんが家で暴走して最悪追いかけてくるかもしれないので二人とも留守番してもらうことになった。
今朝出てくるときも
「ラフォス待って父さんも行くから」
と叫ぶ父さんが母さんに怒られながら殴られている音がしたが、たぶん気のせいだったと思う。
1人で入り口付近に立ち続けてもしょうがないのでひとまず入り口で教えてもらった自分のクラスである三組へと向かった。
クラスに入ると黒板に『下の紙を見て自分の座席を確認してください』と書かれていたので、座席を確認して自分の席に座った。
「お前、受験でライトニングブレスを使ってたやつだろ」
突然かけられた言葉に俺は驚いて声のしたほうを振りかえるとそこには青い髪をした少年がいて
「お前に会ってみたかったんだよ」
「俺、お前とどこかで会ったことあったか」
「いや、今日初めて会った。俺はレイだ。呼び方は呼び捨てでかまわない。よろしくな」
と、手を差し出してきたので俺は握手をしながら
「俺はラフォス。よろしくな。俺も呼び捨てでいいよ。それでレイはどうして俺を知ってたんだ」
「お前入試のときにライトニングブレスを使ってただろ。俺、そのとき試験会場にいたから覚えてたんだ。他に上級魔法を使っているやつも見なかったし」
「そうだったのか。実技試験のときに同じ組だったのか。ところでレイはどんな魔法を使ったんだ」
レイに話しかけられた理由がわかった俺はレイに実技試験で使った魔法をきいていると
「今、上級魔法が使えるって聞こえたけど本当なの」
いきなり隣の席に座っている女子から質問された。
「上級魔法が使えるのは本当だよ」
「本当なのね。その年で上級魔法を使えるなんてすごいわね。私はシリスよ。よろしくね」
「えっとシリスさんだね。俺はラフォス。こちらこそよろしく」
「ラフォス君だね。ねぇラフォス君はどんな上級魔法が使えるの。教えてくれない。ダメかな」
ラフォスに詰め寄りながら魔法のことを聞いてくるシリスに
(シリスさんすごい勢いだな)
ラフォスはこんなことを考えながら質問に答えた。
「ダメじゃないよ。俺が使える上級魔法は実技試験のときに使ったライトニングブレスと同じ属性の光属性の魔法と闇属性の魔法、あとは水属性の魔法と氷属性の魔法ぐらいだよ」
「上級魔法を四属性も使えてすごいね。しかも光属性と闇属性の上級魔法を使えるなんて珍しいよね。私は光属性と闇属性苦手だし。何かコツとかはあったりするの」
「コツって言われてもなー。最初に使えた属性が光属性と闇属性だったし」
「それってすごいことよね。もしかして生まれつき魔法が使えたりしたの」
シリスの言葉に対してどうだったかなとラフォスが考えていると
「お前、いきなり話しかけてきてなんなんだよ」
最初に話していたにもかかわらずシリスの勢いに押されて話から抜けていたレイがシリスに話しかけた。
シリスは驚きながら
「何って上級魔法が使えるって聞こえたから気になってラフォス君に話しかけただけよ。そういうあんたこそ誰よ。私、今ラフォス君と話してるんだから邪魔しないでよね。」
「邪魔って俺が先にラフォスと話してたんだよ。お前のほうが邪魔してきたんだろうが」
「うるさいわね~。誰だか知らないけど言いがかりやめてよね」
「俺はレイだ。お前、いい加減にしろよ」
「お前お前ってうるさいんですけど。私はシリスよ。」
レイとシリスが言い争いをしているなか原因であるラフォスはのんびりと二人を眺めていた。
(二人の言い争いはいつ終わるんだろう。こういう穏やかな言い争いはのんびり眺められていいなぁー)
店で働いていれば文句を言う客もいるわけでレイとシリスの言い争いはラフォスにとって実害が出るわけでもなく、かといって止めなくてはいけないようなものでもなかった。
「シリスいい加減にしなさい」
突然の大声に驚きつつ声のしたほうを見るとそこには1人の女子が腕を組んで立っていた。
「シリス、あなたは何で今日出会ったばかりの人と言い争いをしているの。ほらシリス謝りなさい」
これで言い争いは終わるかなとラフォスが思っていると、
「なんで私が謝らなければならないの。先にあいつが突っ掛かってきたのよ」
「お前ふざけんなよ。お前が先に俺とラフォスと話しているところに割り込んできたんだろうが」
「そんなこと知らないわよ」
さらに悪化していきました。
いつまでたっても終わらなそうなのでラフォスは止めに入った。
「レイ、シリアさん、ユキさんいったん落ち着いて。他のクラスメイトも驚いてるから」
三人はようやく周りが見えてきたらしく周囲を見渡すとはずかしそうにしながらすぐに静かになった。
「すまん」
「ラフォス君ごめんね」
「私も止めに入ったのにすみません」
静かになった三人は口々に謝罪の言葉を口にした。
「ところでシリスさん。そっちの女子は知り合いなのか」
「ああ、この子の名前はユキ。私の幼なじみで親友なの。あとラフォス君、呼び方はシリスでいいよ」
「わかった。シリスって呼ばせてもらうよ。俺もラフォスでかまわないよ。それとユキさんだね。ラフォスです。よろしく」
「ユキです。こちらこそよろしくね。あとそっちの男子はラフォス君の友達ですか」
ユキはレイのほうを向きながら俺に聞いてきたので
「あいつはレイだよ。さっき出会ったんだ。あと呼び方はラフォスでいいよ」
「そうなんですか。レイ君ですね。ユキです。よろしくね。あとシリスが迷惑かけたみたいでごめんね」
「こちらこそよろしくな。俺も少し熱くなりすぎたしユキさんが気にすることではないよ。シリス、俺のほうこそごめんな」
「ユキも謝ってるし、私のほうも言い過ぎだったからこっちこそごめんね」
お互いが謝ったことで言い争いも落ち着いて一段落したところでユキがラフォスやレイに質問してきた。
「ラフォス君とレイ君は今日初めて会ったって言ってたけど何の話をしていたの」
ユキさんから質問されてレイと話していたいたことを思い出したラフォスはレイに質問の続きをした。
「そうだった。確か、レイが実技試験のときに俺がライトニングブレスを使うところを見て覚えてて話しかけてきたんだよな。それで俺がレイにどんな魔法を使えるのか質問したんだよ」
すると話を聞いていたシリスが面白そうにしながらレイに質問した。
「へぇ~そうなんだ。それであんたはどんな魔法が使えるの。まあどうせありきたりな魔法なんでしょ」
「シリス。お前また俺のこと馬鹿にしやがって」
「こら、シリス。そんなこと言わないの。ごめんなさいレイ君。それでレイ君はどんな属性の魔法が使えるの」
ユキさんがシリスを注意したあとシリスと同じようにレイに質問した。
「俺の使える魔法は上級魔法は使えないけど中級なら基本の六属性は使えるぞ。まあ他の六属性は全然だけどな」
「やっぱりありきたりじゃない」
「そういうお前はどうなんだ」
レイに質問されたシリスは得意顔になって
「私はあなたと違って基本の六属性の中級魔法だけじゃなくて重力属性も下級だけど使えるわ」
「なんだ。対して俺と変わらないじゃんか」
「なんですって」
「なんだよ」
結局また言い争いになりました。
「ほら止めなさい」
そう言ってユキさんが二人の言い争いを止める展開となりました。
俺はまだユキさんの魔法だけきいていなかったのでユキさんに質問した。
「ところでユキさんはどんな属性の魔法が使えるんだ」
「私ですか。私は基本の六属性を中級魔法までとあとは光属性と聖属性の魔法を下級まで使えます」
「聖属性まで使えるなんてすごいな」
「ありがとうございます。そういうラフォス君はどんな属性の魔法を使えるんですか」
ユキさんが聖属性の魔法を使えることに驚いていた俺にユキさんが質問してきた。
「俺の使える魔法は水属性と氷属性と光属性、闇属性は上級魔法まで、火属性と風属性と土属性と雷属性と聖属性、呪属性は中級まで残りの二属性は下級まで使えるよ」
俺の返事を聞いた三人は驚いた顔のまま口々に
「すごすぎだろ」
「なんでそんなに使えるのよ」
「全属性が使えるんですね。すごいですね」
と、言った。
三人が俺にさらに質問しようとしたとき
《新入生の皆さんに連絡します。これより入学式を行います。新入生の皆さんは各クラスの先生の指示にしたがって会場に入場してください》
放送と同時に1人の教員らしき人が教室に入ってきた。
「俺が三組の担任になったフェリクス・グロリスだ。これからよろしくな」
生徒たちから「よろしくお願いします」という声がきこえてきた。
「それではさっきの放送にあったように入学式の会場に向かう。座席はクラスごとに別れているがクラス内の座席は自由になっているので好きに座るように。それでは移動を開始するついてくるように」
フェリクス先生に先導されて俺たちは入学式の会場に着くとさっき話していた四人でまとまって座ることになった。
しばらくすると壇上に1人の二十代後半にみえる女性が立っていた。
「まず新入生の皆さん、入学おめでとうございます。私は校長のミシェリア・アデルです。この王立魔法騎士学校は魔法と武術、そして知識を身に付けるための学校です。ここでは身分は関係ありません。生徒の皆さんはこの学園で学べるものをより多く学んでいってください。最後に新入生の皆さん、この学校では自分の家名を名乗らない生徒が多くいます。これは生徒が互いにより親しくなるために自主的に始めたことです。新入生の皆さんももし良ければ真似をしてみてください」
校長のあいさつが終わると生徒会長のあいさつになった。
「新入生の皆さん入学おめでとうございます。生徒会長のシルビアです。私たち生徒会は生徒皆さんの生活を支えていくものです。もし生徒会に興味のある生徒がいればぜひ生徒会室まできて見学していってください。もし困ったことがある場合、先生以外にも生徒会も力になります。生徒会の宣伝ばかりになってしまいましたが、新入生の皆さん新しい学校生活を楽しんでください」
生徒会長によるあいさつという名の生徒会の宣伝?が終わると次は新入生代表あいさつとなった。
「新入生代表のスティーブン君ですが、今日は家庭の事情により欠席のためこれで入学式を終了とします。新入生の皆さんは担任の先生の指示に従って教室に戻ってください」
俺たちはフェリクス先生とともにクラスに戻っていった。
「さっきも自己紹介したが三組の担任になったフェリクス・グロリスだ。これからの学校生活の間よろしく頼む。それじゃあこのクラスのメンバーも互いにわからないだろうしまず自己紹介からにしようか。じゃあ一番後ろ席から自己紹介してもらおう。名前だけでかまわないよ」
フェリクス先生に促され一番後ろの生徒から自己紹介が開始された。
「サレンです。得意な魔法は風属性と雷属性です。よろしくお願いします」
「アランです。得意な魔法は土属性と氷属性です。よろしくお願いします」
徐々に続いていき俺の番になった。
「ラフォスです。得意な魔法は光属性と闇属性です。よろしくお願いします」
全員の自己紹介が終わるとフェリクス先生が
「全員の自己紹介も終わったし今日はこれで終了とする。放課後は遅くならないようにすれば校舎内を見て貰ってかまわない。あとラフォスは生徒会に呼ばれているから生徒会室に行くように。それでは今日は解散」
先生の解散の声でクラスは自由に動きだし、集まって生徒同士しゃべっている生徒が大半になった。
俺の近くにはレイとシリスとユキさんが集まってきた。
「ラフォスお前なんで生徒会に呼ばれてるんだ。何かやらかしたりしたのか」
「いや、特にこれといって、やらかしたっていうのはないんだが」
「そうよ。あんたじゃないんだからラフォスがやらかすわけないでしょ」
「俺じゃないんだからってどういう意味だよ。俺だと何かしらやらかすっていうのか」
「そう言ってをのよ」
またレイとシリスの言い争いが始まりました。
そしていつも通りユキさんが
「こらシリスそんなこと言わないの。レイ君またシリスがふざけたことを言ってごめんなさい」
とおさめたのだった。
「ところでラフォス君本当になにも呼び出された心当たりはないんですか」
「そう言われてもなあ。まあ行ってみればわかることだし俺はこれから生徒会室に行くからまた明日」
「そうですね。わからないことを考えてもしょうがないですしね。あ、でも私たちは学校を見てまわるつもりなのでもしかしたらあとで会えるかもしれませんね」
「そうなのか。レイはどうするつもりなんだ」
「俺も学校を見てまわるつもりだ」
俺たちの会話をきいてシリスが
「じゃあ終わったら皆で集まろうよ。どうせ皆学校にいるならさ~」
「それいいな」
レイはシリスの意見に賛成のようだ。
「でもラフォス君の用件がいつ終わるかわからないのよ。」
「でもそんなに時間がかかることじゃないだろうし、二時間くらいしたら集まろうよ」
「それもそうだな。俺はその提案良いと思うんだが、それに遅かったら先に帰ってもらってかまわないし。ユキさんはどうだ」
ユキさんは少し悩んだあと、
「皆が賛成なら私もそれでいいです。集合場所はどうしますか」
俺は少し考えて
「食堂ならどうだ。待っている間に軽食とかもとれるだろうし、そのまま夕食にしてもいいだろうし」
「そうですね。なら二時間後に食堂に集合ですね」
「シリス、お前遅れんじゃないぞ」
「あんたこそ遅れんじゃないわよ」
結局、二時間後に食堂に集合になり、俺は生徒会室に他の三人は校内を見てまわるのでわかれてそれぞれの目的地に向かった。