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第二話入学試験

 入学の条件が決まったことにより俺は今までのように店を手伝いながら魔法の練習と勉強を繰り返した。


 王立魔法騎士学校は毎年1000人以上の受験者がいるのに対して合格者200人と倍率は実に5倍以上をほこっている。

 この他にも学校があるにも関わらず、この学校にこんなにも多くの受験者が来るのかというと、その理由は国立ということや指導内容の良さ、学費の安さも挙げられるが最大の理由は卒業後の就職先にある。他の学校に比べ、王宮への就職が多いことなどから入学希望者が多い。

 そして合格者の中でも特に入試成績が良い12人がその学年の12階聖として選ばれる。

 12階聖には他の生徒にはない特権が与えられ、実力の証明にもなることから学校の生徒の多くは12階聖になれるように努力している。

 入試内容は筆記試験と実技試験が行われる。


 入試試験の最初は筆記試験だった。

 基礎問題から歴史や計算問題、魔法知識などの筆記試験が二時間行われた。

 筆記試験はきちんと勉強していたのである程度の問題には答えることができた。

 昼休憩を挟んだあとに行われた実技試験では試験官の前で受験者が得意としている魔法を使用するというものだった。

 受験者が多いため時間を分けて実技試験は行われる。

次々と受験者が実技試験を受けていきついに俺の順番になった。

「ラフォス・トクソ君ですね。それではあの的を魔法を使って破壊してください」

「わかりました」

 実技試験では俺の得意とする属性の1つである光属性高位魔法『ライトニングブレス』を使用した。

「これで試験は終了になります。試験の合否は後日手紙を送ります」

(上級魔法を使用している受験者はほとんどいなかったし、どうにか12階聖になれますように)

 そんなことを思いながら俺は試験を終えた。







 合格の合否が手紙で送られてくる1ヶ月後まで俺は店の手伝いや魔法の練習などをしていてもなかなか集中できず、ミスをして母さんに怒られるということを繰り返していた。


 試験から1ヶ月後、ようやく送られてきた合否判定の手紙をみると、そこには『合格』『12階聖・第7聖』と書かれた内容が記されていた。

 すぐに父さんや母さんに報告したのはいいのだがその結果


「ギアニアいい加減にしなさい」

「今回ばかりはルリアになんと言われようと引くつもりはない」


 と、夫婦喧嘩をかれこれ三時間くらいしているのである。


 事の発端は俺が試験に合格し、12階聖になったことを父さんと母さんに伝えたあとに発せられた父さんの


「ラフォスが魔法騎士学校に入学することだし、入学式までの間、ラフォスは店の手伝いをしなくていいから家にいてくれないかい」


 という言葉が問題だった。

 俺はもちろん母さんもこのことには強く反対し、


「いい加減にしなさい。ラフォスが困っているでしょ。ギアニア、あなたはもう少しラフォスから離れられないの」

「何を言っているんだルリアは…ラフォスがもうじき離れてしまうからこそ今のうちにもっとラフォスと一緒に居ようとしているのだよ」

「ギアニア、自分のことばかりじゃなくて少しはラフォスのことも考えたらどうなの。あなたはいつもラフォスのことになると自分の都合の良いようにするか甘やかしすぎるかしかしないんだから。」

「甘やかしているわけではない。心配しているだけだ。それに私に都合の良いようにとはなんだ。私はラフォスが離ればなれになってしまうからその前に少しでも一緒に居ようとしているだけだ。ラフォスも寂しいだろうし」

「それが自分に都合が良いように考えているって言うのよ。ラフォスだってまだ店の手伝いをしたいはずよ」


(いつになったら終わるんだろう)


 そんなことを考えながら夫婦喧嘩を聞き流していると、


「ラフォス。あなたはどう考えているの」


 と、母さんから突然話を振られてしまいました。


(突然俺に話を振るなよ。)


 と思いながら母さんに


「俺ですか。俺は」

「何を言っているんだルリア、ラフォスも家に居たいに決まっているだろ。」


 俺の言葉を父さんがいきなり遮ったあと


「父さんは黙ってて」「あなたは黙ってなさい」


 俺と母さんが同時に父さんを黙らせたのだった。


「それで、ラフォスはどうしたいの」


 再び母さんから質問され、俺は少し考えながら父さんと母さんをしっかり見て答えた。


「俺は今まで通りに店を手伝いたいです。」

「そんなことを言わないで、家に居てくれないか。ラフォス。」


 焦りながら俺をなんとか家に居させようと再び問いかける父さんに俺は呆れながらいつものように


「店の手伝いをさせてくれないと嫌いになりますよ。」


 そう言い放ったのだった。

 すると、いつものようにすぐに手のひらを返して


「わかった。店の手伝いをして良いから父さんを嫌いにならないでください。でもお願いだからいつもより長く家に居てくれないか」


 予想通り店の手伝いをすることを認めさせたもののそれでも俺と少しでも一緒に過ごしたいらしい父さんはさらに頼み込んできた。

 俺が少し考えていると、


「そうね~私もラフォスにいつもより長く家に居てほしいのだけどダメかしら」

「母さんまで俺に家に居てほしいの」

「もうすぐラフォスと離れると思うと寂しくなっちゃってね。だめかしら」


 少し悲しそうな表情で告げられる母さんの言葉に俺は理解した。

 “ここで断ったらまずい”と。

 実際母さんから断る選択肢はないと告げるオーラがでているようにかんじられた。


「わかったよ。母さんや父さんの言うようにいつもより家にいるようにするよ」


 俺にはこの道しか選択肢が残されていなかったのだった。

 そんな俺にさらに母さんは


「あ~そうそう入学式までの間もしっかりと魔法や武術の鍛練は怠らないようにね。12階聖に入ったとはいえ、気を抜くとすぐに12階聖の下の順位の子はもちろんだけど、12階聖じゃない子達にも抜かされてしまうからね。12階聖じゃなくなったら退学も考えなくちゃだから合格したいからって気を抜いちゃダメよ。もし1人で鍛練をするとやる気がでないなら私が手伝ってあげるから言ってね」


 地獄の母さんとの鍛練メニューを進めてきたのである。

 ルリア・トクソは魔道具作りの天才である。

 このことは多くの人々が知っている。

 実際、トクソ商会の販売する魔道具の半分以上が母さんによって提案されたものである。

 しかしそのような一面とは違い、ごく限られたものにしか知られていない一面もある。

 それはルリア・トクソは戦いにおいても天才であるという事実である。

 幼い頃から魔道具作りと一緒に学んだ魔法や武術はルリア・トクソを王国内指折りの戦闘能力の持ち主にしてしまったのである。

 そんな母さんが以前俺の鍛練に付き合ってくれたときがあった。

 その時俺はひたすらできるようになるまで限界を越えるほどの鍛練をうけたのである。

 それ以来たまに俺の鍛練に付き合うようになった母さんであるが、その度に俺は死にかけた。

 だからこそ今回はなんとしても母さんとの鍛練を回避しなくてはならない。


「母さんせっかくの申し出ありがたいんだけど、ほらトクソ商会の皆にも合格の報告をしたいからすぐに店にいきたいんだよ」

「なら明日とかはどう」

「母さん、当分の間、学校の準備などがありますのでまたの機会にお願いします。」

「それじゃあ仕方がないわね。」


 渋々といった様子だかなんとか母さんを納得させることができ、母さんとの鍛練を回避することに成功したのだった。









 結局店に着いたのは夫婦喧嘩のせいで夕方になってしまった。


「ラフォス様、今日は遅かったようですが何か問題でもありましたか」


 店に入るとバランが心配そうに訪ねてきた。


「いやバラン、特に問題はないよ。ただ父さんと母さんが夫婦喧嘩をしてしまってそれに付き合ってたら遅くなってしまっただけだ」

「それはお疲れ様です。ギアニア様とルリア様が夫婦喧嘩とは珍しいですね」


「ああ。俺の入学が決まったことで問題が起きてな」


「問題ですか。それはまた大変でしたね。それよりも入学が決まったというのは王立魔法騎士学校への入学ですか」

「そうだよ。今日はその報告をしようと思ってたんだ。いつも皆にお世話になってるし」

「お世話になっているだなんて、私たちトクソ商会の人間は皆トクソ家に仕えているようなものなんですから当然のことです。それよりも皆でお祝いをしなくてはいけませんね。いそいで準備させましょう」


話をしているバランはもちろんのこと、話が聞こえている店の皆もすぐにお祝いの準備に入ろうとしているので、そのつもりがない俺は皆を止めつつバランと本題に入った。


「入学が決定したから俺は1ヶ月後からここから離れることになる。それまでにまだ店のことで学んでいないこと学んだり、店の皆にあいさつをしたいんだが問題ないか」

「それはもちろん。皆とても喜びます。しかし本当にお祝いをしなくてよいのですか」

「かまわない。あと休暇のときは帰ってくるからそのときは店を手伝うよ」


とても喜んでくれているバランと話している途中に通りかかる店員皆から「合格おめでとうございます」や「頑張ってください」などのお祝いの言葉などをもらっていった。


「じゃあ入学するまでの間はいつも通りに来るから」


一時間くらい話した後、俺は家に帰ることにした。


「それではラフォス明日からもよろしくお願いします。お疲れ様です」


『お疲れ様です』


いつものあいさつをしたあと家にかえったのだった。















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