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部長に読ませてもらった小説『不思議な青春』は、とても面白かった。
日常の謎系の話だったが、内容は深くてとても高校生が書いたものとは思えない出来だった。
先に読んだ響が部長と喋っている。
俺が読み終えたのに気づいたのか部長がこちらを向く。
「水上くん。どうだった? あまり読めるようなものじゃないと思うけど......」
「そんなことないです! すごく面白かったですよ!」
「そう? 倉重くんもそういってくれてー」
響がこちらを見る。
「こんなに面白いのを書くのに、コンクールとかには出したことないって言うんだよ。もったいないと思わないかい?」
「私もそう思います。絶対コンクールに出すべきですよ!」
席に座って本を読んでいた深水も話に入ってきた。
「でもまあ、趣味でかいてるものだしー。そんなコンクールに出しても意味ないよー」
「でもクライマックスのシーンとかすごくよかったですよ。あの謎が解けていく感じとか......」
――もうすぐ下校時間です。校内にいる生徒は直ちに下校しなさい。
なんて話の感想を言い合ってるうちにこんな校内放送が聞こえてきた。時間がたつのが早い。
「あっ、もう下校時間だねー」
「もうそんな時間か......」
ずっと話していた響が残念そうな顔をしている。
「深水さんって家どこなの?」
「私は明里市の西の方よ。自転車で通学してるの」
思ったよりもみんな遠いとこから通ってるんだな......
「僕たちは学校から徒歩10分位だからね」
「まぁ俺たちの場合、学校が近いからこの高校を選んだんだけどな」
俺は本が数冊入ってる鞄を持って立ち上がる。帰ってから読もう。
「帰るぞ響」
「じゃあ部長、深水さん、お先です」
「じゃあね二人とも。また明日学校で」
「僕も何か話書いてみようかな」
帰り道、もう暗くなりそうな空を見つめて響が言う。
「お前なら書けるんじゃないか?」
そう応えた俺に響は首を振る。
「いや、実は僕ああ言うの書くのはあまり得意じゃないんだよ」
へぇ......結構文章とか書くの得意そうだと思ったのにな。
「僕がかけるのはどちらかと言うと説明文とかそっち系だよ。物語を想像して書くのは難しいね」
響が視線を空から俺に移してくる。
「そういう太一こそ、何か書いてみたらどう?」
小説とか書いたこと無いから一回やってみようかな......文芸部に入ったことだし。部誌にはどうせ何かを書かなきゃいけないからな。
「ああいうの書く時って何からすればいいんだ?」
「うーんと、まずはキャラと構成を考えるところからかな?」
構成か......どんなジャンルのやつを書くかから考えないとな。
「ジャンルといってもいろいろあるからね......太一に恋愛ものとか書けるのかな?」
そういって響が笑いかけてくる。
くっ......書くに当たって実際の経験が欲しいところだ。
「まあ話のネタなんてそんなすぐに思い付くものでもないし、ゆっくり考えればいいと思うよ」
「そうだな。文化祭まではまだ時間あるし」
俺は足元にあった小石を軽く蹴る。それを目で追っていた響が視線を止めた。
「それより部員が一人足りない事態をどうにかしないとね。文芸部がなくなっちゃったら僕らが入った意味もなくなっちゃうわけだし」
「部員なんてそのうち入ってくるだろ。現に高1もう3人いるし」
「だといいけどね......」
なんかフラグを建ててしまった気がする......神様でも仏様でもいいからフラグを折ってもらうようにお願いしとこう。