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黒板に並んでいる日本語ではない日本語を見つめながら思う。果たして古文なんて勉強して何の特になるというのか。極論、英語以外の科目に勉強する必要性を感じられない。その中でも古文なんてこの先絶対必要ない。使うのなんて古文か歴史の研究者になる時くらいなのではないか......
なんていいつつもいつ来るかわからないその時のために真面目に勉強してるわけなのだが。
なんて考えてると、今日最後の授業が終わる。
放課後、ふと気になったことを後ろでスマホをいじっている水島に聞いてみた。
「水島は部活ってどこ入るの?」
......返事がない。
「えっ? あっごめん聞いてなかった。なんて?」
意外だ。スマホ触ってると周りの音も遮断してしまうタイプだったのか......
「いや水島は部活どこに入るのかなーと思って」
「私はー.......手芸部に入ろうかなーなんて」
なるほど......確かにイメージにあってる。家事系は得意そうだもんな。
「水上君はどこ入るつもりなの?」
「俺はまだ何も考えてないんだよな」
うーん。手芸部じゃ参考にできそうにないな。いや、もしかしたら俺には秘めたる裁縫スキルが......ってそもそも男いない所に入る勇気はない。他に意見を聞く人はいないか......と考えたとき、
「あのー」
横から声が聞こえた。
「部活、悩んでいるなら是非文芸部に入りませんか!」
ええと......この子は確か同じクラスの......
朧気な自己紹介の時の記憶から答えを見つける。
「ええと......深水......だっけ?」
「あっ、そうです! 」
どうやら俺の記憶は正しかったようだ。
「それで部活で悩んでるなら文芸部に入りませんか?」
大事なことなので2回言いました……か? こちらから質問しないとまた同じこと言われそうだ。
「まだ学校始まって1週間も経ってないのに入部どころかもう勧誘してるの?」
「はい。私高校に入る前から文芸部に入ると決めてたんで」
よっぽど本が好きなのだろうか。
「でも、文芸部は私を除くと1人しかいなかったの」
黒く、つややかな髪を揺らす。
「このままでは部員が足らずに廃部になってしまうかも! 」
なるほど……事情は一応わかった。
「分かった......なら今日文芸部、見に行ってみるよ」
深水は大きく綺麗な瞳を見開いた。水島ほど目立ちはしないが、よく見ると深水もかわいい。
「ありがとう! 是非入部してね!」
そう言うと嬉しげな顔をして水島と喋り始めた。
......結構単純なやつなのか。
こうして文芸部を見に行くことになった俺は放課後、響を連れて、文芸部部室を探していた。
うちの高校では、文化部の部室は本校舎から離れたところにある校舎、通称旧校舎にある。名前の通り、うちの学校の中で1番古い建物である。
「えーと文芸部文芸部......あったよ」
部室割り当て表を見ていた響が言う。
「2階の廊下をずっといった突き当たりのところだね」
「本校舎から1番遠い所か......」
通うとなったらめんどくさいところだ。まあそもそもこの建物自体が遠いからどの部室でもめんどくさいのだが。
「ここだね」
丸いドアノブがついているなんだか古臭い扉だ。
「開けるぞ」
俺はその丸いドアノブを握った。
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