3
うーん......
俺はまだ真っ白な画面を前にして悩んでいた。
明里市住みだと正直に言うべきなのか、それとも他の遠く離れた町に住んでいることにするのか......
もし、遠く離れた町に住んでいると嘘をついたなら、後々面倒なことになりそうだ。一々辻褄を合わせていかなければならないし。それに、俺が罪悪感に苛まれそうだ。自分から送ったわけでもないし、嘘をつくメリットなんてない。
そう考えた俺は、メールを書き始める。
『
清水さんへ
こんにちは。あなたの手紙、受取りました。
明里市に住んでいる、高1の男子です。
砂浜に転がっているこのビンが気になって開けてみたところ驚きました。
せっかく海に流したビンなのに同じ市に住んでいる俺が受け取るというのはなんか悪い気もしますが......
』
うーん....文章力がない。もう何を書けばいいかわからなくなってしまった。もうこのへんで『返事待ってます』とか書いて終わってしまおうか......
ところで俺はこの手の偶然の出会い、というやつが好きだ。何か魅力を感じる。同じように運命、とかいうのも。「世の中のことはすべて必然であり、偶然起きることなどない」なんて言ってる人を見ると残念なやつだな.....なんて思う。だからこうしてやってきたボトルメールの返事を書いてるわけだ。
結局、『清水さんがどんな理由でこれを流したのか、気になります。返事待ってます。』とだけ書き加えて、送信ボタンを押した。
時計の針の音がカチカチいつもより早く聞こえる。
ふと時計を見るともう12時になろうとしていた。
「寝るか....」
その夜は俺が何か青いものに包まれる夢を見た......気がした。
***
昨日同様、今日も青空が広がっていい天気だ。
俺は席のとなりに立っている響と喋っていた。
「昨日の部活見学、どこか気になるところはあった?」
「うーん......クイズ研究部とか?」
うちの学校は部活がやたらと多いことで有名だ。何をしているのか分からないようなところや、下限ぎりぎり5人しかいないところなどその種類も多岐に渡る。
「それはなんか大変そうだったけどね......まあ今日も回ってみようか」
なんて話してたら後ろから綺麗な声が聞こえた。そういえばこの声、歌手の誰かに似てるな......
「水上くん、倉重くんと仲いいんだ」
「ああ。幼稚園からの腐れ縁っていうか......」
響と目が合う。
「へー......私小学5年生の時にこっちに来たからそういう友達いないんだよね」
と言っている水島は何処か遠い所を見ているようだ。
「まあ僕と太一は家が近所だからね」
「私そういう友達に憧れるなー」
水島くらいしっかりして皆と仲がいいやつなら親友の1人2人くらいいそうなもんだが。
「水島さんは友達いっぱいいるでしょ?」
「親友って言えるくらい仲がいい友達が欲しいなーなんて」
水島が続ける。
「そういえば水上君って成績いいの?」
話を振られた俺は手のひらを頭の上でひらひらさせる。
「ああ、まあ一応な。そのおかげで学級委員やらされてるけど」
「一応とか言ってるけど中学の時、たいして勉強もしてないのに学年順位1ケタキープしてたんだよ。少しは真面目に勉強してる僕の気持ちも考えて欲しいね」
俺だって全く勉強してない訳じゃないんだけどね......特にテスト直前に読み始めた本が止まらなくなってテスト勉強全然できなかったときとか焦った......あれ? これって勉強してないのか。
「羨ましい......私成績なかなか上がらないんだよねー」
意外だ。水島なら成績もトップクラスかと。
「何? そんな意外そうな顔してー。私そんな優等生じゃないからね」
授業が始まるチャイムがなる。
「あ、もう授業始まるね。水上君成績いいなら勉強教えてもらおうかなー?」
非常に魅力的な提案ですが、2人きりなら緊張して勉強教えるどころじゃないです。はい。