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遅れたおかげ

作者: 尚文産商堂
掲載日:2014/11/30

電車がいくらか遅れているという。

そんな放送が、構内の流れていた。

時計を確認すると、本来であれば今頃着いているという時間。

放送では、どうやら無謀横断があったようだ。

わずかに苛立ちを覚えるが、今はどうしようもない。


「あれー?」

そんな時、俺に声がかけられる。

そちらを見ると、近所に住んでいる人だ。

幼馴染の関係に近い、確か彼女が1歳年上だったはずだ。

「帰り?」

「うん。そっちも?」

俺の近くへと歩み寄り、彼女は話しかけてくる。

「そう。大学の帰り」

「そっか、もう大学生なんだね」

そう言う彼女の私服は、とても美しく見える。

冬にさしかかっているということもあってか、マフラーに、ふわふわの上着だ。

「そうだよ」

俺はそう言って、彼女の顔を見る。

よく知っている、昔からあまり変わらない顔だ。

「一緒に帰る?」

「うん」

彼女は何やら喜んでいる。

……ああ、そうか、そうなのかもしれない。

彼女は俺に恋をしてるのか。


だが、そのことを言うことはできなかった。

その思いを尋ねる前に、別れてしまったからだ。

それでいい、俺はそう考えるようにした。

もしかしたら、俺の間違いだったのではないか。

そう考えるのが一番自然に思えた。

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