6話
今回は2話投稿します。まずは1話目、魔物襲来の話。
赤闘犬をすれ違いざまに手刀を振るい首を切り落とす。
調子が良い。
ゴブリンをすれ違いざまに拳を振るい頭部を粉砕する。
身体が思うように動く。
豚獣の横を擦り抜け背後に回り、首に蹴りを叩き込み圧し折る。
想像以上の力が身体を廻っている。
今なら何でもできそうだ。・・・・やりはしないが・・・・。
次々と下位の魔物を屠っていく。
「・・・・ちっ。殺しても次々と湧いてくるな・・・・これじゃあ、いつまでも経っても埒があかない。それに強い魔物もちらほらと確認できる」
周囲を見渡す。デルマを含め、他のエルフ達も魔法や弓を使い魔物を殺している。しかし、その数は思っているよりも減ってはいない。
「おい、デルマ!俺は強い魔物を殺す。雑魚は任せてもいいか?」
「ああ、任せろ!腕はいいのか、骨が折れていたはずだろ?」
「大丈夫だ。片腕だけで処理できる。それに腕はお前が折ったんだろが!・・・・お前こそ片腕だけでいいのか?」
「問題ない。雑魚なら足だけでも殺せる。・・・・言い返すがお前が儂の腕を折ったのだぞ」
「・・・・そうか、なら良いな」
「さっさと片付けてこい」
雑魚は無視して魔物の合間を走り抜く。狙うは蜘蛛だ。
名前:
種族:鎌蜘蛛
階級:魔物「上位」
技術:操糸
名前の通りに前足二本が鋭い鎌となっている。見たところ体色は茶色をしており、高さは一メートル、全長二メートルだ。それに見たこともないスキルを持っている。文字通りの意味があるのだろう。上位の魔物だ。油断はできない。
「シャアアアァアァァアアァ!!」
蜘蛛の威嚇。口には鎌状になった鋏角が見える。あの口に噛まれてしまえばあの鋭い鋏角で切り裂かれ、一瞬であの世行きだ。さすがにそれは勘弁してほしい。
懐に潜り込み、鎌となっている前足二本を斬り落とす。
「ギャシャアアアアァァ!!」
叫び声を上げ、フラクスパイダーの眼が怒りに染まる。残り足と糸を利用し、木々の間を立体的に移動して攪乱してくる。射出した糸をスキルで操作。不規則な弾道で襲う。しかし、それをただ単純な速さで回避して攻撃さえ与える。残りの足を斬り落とされついに地に伏した。最後に頭部を破壊して終わりにする。
『スキル「爪牙」が「双天爪牙」にスキルアップしました』
・・・・!?スキルって上位版に変化したりするのか・・・?
早速使ってみる。爪の長さの調整と爪牙に比べて硬質化が増している。さらに両手での使用が可能になった。爪の長さは最大で二十センチ程まで伸びるようになった。
迫りくるゴブリンにその爪を振るう。抵抗もなく、胴体を上下に分けた。切れ味も数段上がっている。これは使い勝手が良くなっている。
腕を骨折しているがそこまで痛みはないだろう。爪を振るい、ルーガウルフの首を斬る。
ズキッ!!
・・・・イタイッ。・・・・・やはり無謀な挑戦だった。通常状態でも痛いのにさすがに無理があった。
雑魚をある程度殺しながら次の獲物を探す。視界の奥に体格の良い大きい魔物が見えた。
名前:
種族:一目鬼
階級:魔物「上位」
技術:剛力
またも、知らないスキルを持っている。体色は青色で高さは三メートル程ありそうだ。
「なぜ、マモノであるオマエがエルフのミカタをする?」
喋った!?・・・・だけど、上位の魔物だ。知恵があっても不思議ではないか・・・・。
「俺は誰の味方でもない。エルフとは利害が一致しているだけだ」
「・・・・そうか。敵ならば容赦はしない」
サイクロプスは棍棒を振り上げ、素早く振り下ろす。それを回避し、足を斬りつける。しかし、肉を斬ることはできず皮膚を斬るのみであった。
―――硬いな。・・・・ならば。
後に回り込み、関節である膝裏に爪を突き刺す。
―――ブシュッ!
血が噴き出す。爪を最大まで伸ばし、確かな損傷を与える。
「ガァアアアァァアアァア!!!」
棍棒を振り回す。すでに足元から離脱しているため、俺に当たることはなかった。
片足で移動できる速さはたかが知れている。ここからは攻撃に注意しながらヒットアンドアウェイで仕留める。
「キサァマアアァァアア!!ユルサンゾォオオオォオ!!」
サイクロプスの身体が青色から赤色に変色する―――いや、体色は変わっていない。赤いオーラを纏っている。
「スキル『ゴウリキ』!」
「何だ、あれは・・・?」
あんなスキルは・・・・俺は知らないぞ。どんな技なのかも分からない・・・・だけど、やることは変わらない。様子を見ながら攻撃を仕掛ける!
棍棒を振る。―――ブウォン。凄まじい風切音をさせ、目の前を通り過ぎる。振り上げて、俺に向かって振り下ろす。回避。棍棒が地面に激突し、小さなクレーターを作る。
懐に入り、斬りつけるが皮膚が浅く斬れただけだった。
・・・・さっきよりも硬いな。あのスキルの効果はだいたい分かった。あいつは剛力と言った。なら、身体能力が上昇する類のスキルだな。その証拠に・・・・。
先ほどできたクレーターを見る。
・・・・力が増している。そして、皮膚が硬化している。だけど、速さは上昇していなかった。ということは身体能力が上昇するスキルだがその効果は力の上昇と硬化と判断できる。・・・・だが、どれくらい持続されるかが分からない。あのスキルが発動している間は俺の攻撃はほとんど意味がない。・・・・まったく、面倒なスキルだな。
今もなお振り回し、俺に当てようとしているが当たらない。片足が使えない状態では制限される。
「アタレ、アタレ!アタレェェエエエェ!!シネェエェエエエ!!」
振り回す棍棒が当たることない。そして、ついにスキルの効果が停止した。
―――今だ!
もう片方の足も同じようにする。サイクロプスは両膝を付き、目の前にいる俺に向かって棍棒を振り下ろす。俺はそれに応じる。気力を纏った拳を放つ。棍棒と拳の激突。しかし、速さもなく力の乗っていない攻撃では意味がなかった棍棒は粉砕された。跳び上がった俺は驚愕しているサイクロプスの単眼に一突き。そのまま奥へ差し込み脳を貫き、サイクロプスは絶命した。
時間がかかってしまった。状況を確認する。魔物の数は最初と比べ少なってきている。しかし、魔物の数に対してこちらの数が圧倒的に足りない。このままだと死ぬのは時間の問題だが、弱音を吐いている場合ではない。
俺は次々と雑魚魔物を屠っていく。
どれくらい時間が経っただろうか。
「援軍はまだなのか!?」
「このままでは持ち堪えるのは無理だ!」
「矢が尽きた!誰か持ってないか!?」
「もう少しで魔力が尽きそうだ!」
怒号の様に声が飛び交う。こんな状況だ。誰もが疲弊してきている。俺も疲弊で注意力が散漫になり、生傷が増え続けている。
○ ● ○ ● ○ ● ○ ● ○ ●
エルフの里でも魔物の群れに襲われていた。
フィガルは長老に援軍の進言をして最低限の者を残し、出発しようとしていた頃に魔物に襲われた。
「女、子供を中央に集めろ!避難を優先だ」「土で壁を作って進路を制限する!」「応戦しろ!少しでも時間を稼げ」「矢が足りないぞ!すぐ補充だ」
あちらこちらで声が飛び交う。
「フィガル!」
フィガルは声のした方を振り向く。そこにいたのは小さい子から一緒に育った親友とも呼べるエルフ―――ゾ
オルであった。ゾオルの後ろには四人のエルフの姿もあった。
「ゾオルか」
「フィガル。お前に言われた通りに四人連れてきた。これで俺を含め五人だ」
「ありがとう。これからデルマさん達の援軍に向かう」
それぞれ頷く。そこからの行動は早かった。最短で里を抜け、デルマと分かれた場所まで走る。道中、魔物に追われるがどれも雑魚のため、すぐに排除できた。
数十分走り続けるとデルマ達を発見する。しかし、魔物に囲まれており、辿り着くことができない。
「おい、変異種のゴブリンがいるぞ!」
「大丈夫だ。あいつは一応、味方だ」
「ゴブリンが味方!?どういうことだ?」
フィガル以外のエルフは困惑した。それもそのはずだ。同じ魔物であるゴブリンがエルフの味方をしているのだ。混乱するなというのが無理な話だ。
「あいつが娘を連れてきた」
「娘さんが見つかったのか!?それはよかった」
「ああ、魔物に襲われていた所をあのゴブリンが助けたらしい」
「最下種のゴブリンが、か」
フィガルの話を聞いたゾオルは眉を顰める。
「しかし、ゴブリンがこの魔物を連れてきたという考えはないのか?」
「それは一番初めに考えたが、あいつがこちらの味方に付いている以上それはないだろう」
「これから裏切るということは・・・・?」
「それもないはずだ。あいつを見てみろ」
ゾオルはゴブリンを見るとその姿は疲弊しきっていた。身体中、生傷だらけとなり寝返ったとしても不利のはずだ。
「確かにあの状態では無理だな」
「おい、二人とも。今はそんなことよりも合流することが先決じゃないのか?」
一人のエルフの介入で二人の会話は途切れた。
こんな状況で悠長に話している場合ではないなと二人は反省する。
「魔物の層が薄い所を探すぞ。そこから突破し、合流する」
フィガルの指示で今後の行動が決定した。そこから二組に分け、行動する。
「見つかったか?」
「ああ、こっちだ」
そこから移動する。ちょうどそこは来た道の反対側だった。
「よし、ここを突破する。できるだけ派手にやってくれ。援軍が来たと知らせるんだ」
魔法を使い、派手に魔物を倒していく。しかし、どれもが実用的で魔力をあまり消費していない。
「・・・・援軍だ。・・・・援軍が来たぞ!」
「「「おおお!!!」」」
そこからは士気を持ち直し、まさに獅子奮迅だった。だが、魔物の数があまりにも多かったために一時間は悠に経っていた。
「デルマさん、実は里にも魔物の群れが現れました」
「なるほど、それでこの数か」
「そうです。ですので、これから急いで里に戻ります」
「うむ、わかった。儂も戻って魔物の討伐をしよう。ゴブリン、お前も手伝え」
俺に向かって平然とそんなことを言ってのける。
「俺は里に入れないと思うんだが・・・・」
「それは心配ない。私から長老に進言して許可を頂いた」
俺とデルマの会話にルナ父が加わる。
「ルナ父か」
「ルナ父ではない!私はフィガルだ!それに娘の名前は・・・・」
「ルーナティニティだろ?長いから短くしてルナと呼んでいる。・・・・それにしてもよく長い名前を付ける気になったな」
「な!?ゴブリン風情が!」
「ゴブリンだが何か?」
「そこまでにしておけ」
デルマが仲裁に入るが俺は感情的になっていない。なってるのはルナ父だけだ。
「なぜ、私はゴブリンの里への立ち入りの許可を願い出たのか・・・・」
無意識なのだろう。そんなことを呟いていた。
「フィガル、感謝する」
素直に頭を下げる。俺はきちんと感謝できる魔物なのだ。
その姿に誰もが驚く。普通は魔物がこんなことするはずがない。だが俺は普通の魔物ではないのだ。
「ゴブくん、だいじょうぶ?」
「俺は大丈夫だ。ルナも大丈夫か?」
「うん、だいじょうぶだよ」
頭を撫でてやると笑顔になる。やっぱり、この顔を見ると和むな。
ルナはまだ七歳だが途中から戦闘に参加していた。大人と違い魔法の発動は遅かったが一役買ったのは間違いないだろう。俺が言うのも何だがこれも良い経験だ。
「和むのは良いが、今から里に戻るぞ」
デルマのその一言で和みは強制終了させられる。それも仕方ないことだ。
・・・・
・・・
・・
エルフの里。
やはり想像通りに木造建築の家が多かった。樹が乱立しているかと思えばそうでもない。門を抜けると草花が広がり、そこに家が建っている。そして小川も流れており、一目見て綺麗な所だと印象を与える。一番驚愕なのは中央の大樹だ。幹の太さは直径二十メートル程もある。高さはどれくらいあるかは確認できない。
しかし、そんな綺麗なエルフの里も魔物の襲来で悲惨なことになっていた。土は抉れ、小川にはエルフか魔物とも分らない血が赤く染めている。家も崩れ、あちらこちらで火と煙が上がっていた。
そこからは状況確認と魔物の残党狩りが始まった。
数時間かけて魔物を狩り尽くした。幸いに死者はいなかったが四肢を損失した者が大勢いた。
同じ魔物であるはずの俺が魔物狩りに参加していたことにエルフ達は困惑と恐怖、拒絶を示していたが時間が経つにつれて徐々になりを潜めていった。
最後に死体である魔物の一体を火に投げ入れる。
「・・・これで終わりか」
ふぅと息を吐き、近くにあった切株に腰を下ろす。
「ゴブくん、おつかれさま~」
声のした方を振り向くとそこには案の定、ルナが立っていた。手に持っているのは水筒だろうか。長い筒をしている。
「はい、これ。ノドかわいてるでしょ?のんで」
どうやら俺のために飲み物を持ってきてくれたらしい。この子は将来、良い嫁になる。そう確信してしまう。
「ありがたく貰おう」
結構の量が入っていたが、喉の渇きを潤すのに一気に飲んでしまう。ただの水なのにうまかった。
「ごちそうさま」
一言伝え空となった水筒を渡す。ルナは渡された水筒をボーッと眺めていた。
「どうした?」
「ううん、なんでもないよ!」
ルナは激しく首を横に振り、否定したが頬が若干、朱に染まっていたのを見た。そんなルナを見てると可愛く思ってしまう。実際、可愛いのだが・・・。
多分、それで気が抜けてしまったのだろう。筋肉が硬直し、倒れてしまう。倒れてしまった俺を笑顔から泣き顔になってしまったルナが揺するが反応することができない。
泣きじゃくるルナを見つけ何事かと思ったのだろう。デルマが近付いてくるのが分かった。
デルマが俺に向かって言う。
「だから言っただろう。そんな気力の使い方ではもたないだろうって・・・。それに気力を使いすぎだ、それではブッ倒れるのも納得する。だが、それも良い経験だ今のうちに体験しとくいいだろう」
徐々に意識が薄れていく。
「目を覚ましたらお前に戦い方と知識を教える。今のうちに十分に休め」
今もなお泣くルナを横目にデルマの言葉を最後に俺の意識は沈んだ。
現在のステータス
名前:
種族:小鬼変異種
階級:魔物「上位」
成長:100
※条件未成立によりランクアップできません。余分な経験値はランクアップ時に加算されます
技術:「眼」 (壱眼・弐眼) 「双天爪牙」「覇気」「気力」




