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05:裏庭で彼女を慰めたら気を許してくれた

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「聞いて聞いて!ミミちゃんの隷属に成功したわよ!」


 夏休み後半、ユンナがリルのルームメイトを隷属させるのに成功した。

 隷属とは、俺やユンナの様な吸血鬼と呼ばれるモノ達の為に生きる吸血鬼化した人間のことだ。

 主人となる吸血鬼の血を糧に生き、その血を得る為なら大抵何でも言う事を聞いてくれる便利な存在だが、言う事を聞かせる為に対価として自分の血を分け与えなければならない為、複数所持は難しい。

 だから、基本、吸血鬼達は余程気に入った存在でないと、人間を隷属化しない。


 隷属はいつでも出来る訳ではない。

 普通に人間に噛み付いても隷属は作れず、人間は死んでしまう。

 隷属には条件が必要なのだ。


 ・マーキングにより所有印を刻む。

 ・新月の日に吸血する、特に自分の誕生月だと成功率が上がる。

 ちなみにユンナは八月生まれだから、この条件を満たしている。

 ・血を貰った後で、自分の血を与える。血は飲ませても傷口に垂らしても構わない。


 以上の全ての条件を満たす事により、隷属を作り出す事が出来る。


「どうやったの?」


 今後の参考の為に、一応聞いておく。


「ふふ、ディナーを装って、お泊まり会を装って、睡眠薬を飲ませて眠り込んだところで頂いたわ」

「……外道」

「アンタに言われたくないわよ! それに、今後の事を考えるとあの子のトラウマになる様な事は避けたかったの」


 もっともだ。

 血を頂いて終わり、では無いからこそ、気を使わなければならない。

 信頼関係が築けないと、双方共にその後の吸血行為に困難をきたすなどのダメージを受ける。

 隷属契約はリスクを伴う物なのだ。


 一足先に、獲物の隷属化に成功したユンナが羨ましくてならない。


「アンタの誕生月ももうすぐでしょう? しくじるんじゃないわよ?」

「分かってる」


 俺の誕生月は十月だ。

 あと、二ヶ月……。

 隷属契約に万全を期す為に、わざわざ今まで我慢して来たのだ。


 絶対に成功させてみせる。



 二学期が始まった。

 リルも元気で学園に戻って来ている。


 彼女の首にくっきり自分の所有印が浮かび上がっているのを見ると、嬉しくて笑いが止まらない。

 可愛いなぁ、俺の物だってアピールして歩いているんだから……。


 ある日、学園の裏庭にリルがいた。様子がおかしい。


「リル……泣いているの?」

「かい……ちょ……う……うぅっ……」


 嗚咽でうまく喋れないようだ。


「可哀想に……誰かにいじめられたの……?」


 言ってごらん? 相手をこの世から消してあげるから。


「ちがっ……ふっ……うぅ……」


 よしよしと頭を撫でた。

 これは断じてマーキングではない!


「何があったの?」


 リルは、ルームメイトがユンナの部屋に移り住むのに、何の相談もなかったことにショックを受けていた。

 ユンナの奴、リルの事もフォローしておけよ。


「そう、それは辛いね」

「わた……しっ、何も……できなく……てっ……」


 こんなに泣き崩れて。俺らに振り回されているんだよね、この子も。


「……リル……ごめんね」


 気が付くと、思わず謝っていた。色々な意味で。


「?……何がですか……」


 キョトンとしている顔も可愛いよ。


「……ううん、なんでもない」

「……?」


 それから彼女が泣き止むまでのしばらくの間、ずっと髪を撫でてあげた。

 彼女は大人しく撫でられている、もうだいぶ俺に気を許してくれているようだ。


「もう、大丈夫です。ありがとうございました」

「そう?」


 残念、一晩中でも撫でていてあげるのに。


 リルは丁寧にお礼を言うと、裏庭から去っていった。

 彼女のルームメイトは数日後、副会長の居るローザ寮へと移っていった


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