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02:襲われた彼女を騎士のごとく救い出してみた

 リルについて困った事がある。

 彼女が無意識のうちに振りまいている匂いの所為で、我を失う輩が多過ぎるという事だ。


 学年、性別を問わず、彼女はありとあらゆる同族達を誘惑する。

 もちろん、マーキングがあるにもかかわらず、誘惑に負けるような輩は彼女に手を出す前に始末している。


 今日も、その匂いにつられた馬鹿が彼女に手を出そうとしていた。

 どうせなら、彼女に近づく為に、その馬鹿を利用してやろうか。

 決してユンナが羨ましかったから焦っているのではない。


「痛いっ!何するんですか!」

「お前、良い匂いがする。味見させろ……」


 二年のグレイ・モングか。

 彼女にあんなに接近するなんて、俺でさえ声しか掛けたことが無いのに……許せない。

 これ以上は見ていられなかったので、声をかけた。


「何をしている」

 俺の声にグレイが驚いている隙に、リルが奴を突き飛ばして離れた。

 まさか、俺が来ているとは思わなかったんだろう、グレイが面白い程青い顔をしている。


「か、会長……これはっ……」

「何をしているのか聞いているんだよ」


 まあ、知っているけどね。


「あの……っ……」


 グレイはモゴモゴと何か言い訳しているがよく聞こえないし、聞く気もない。


 俺はリルの方に向き直ると、さっきとは打って変わって優しい口調で話しかけた。


「大丈夫だったかい?何もされてない?」

「……はい……助けて頂いて、ありがとうございます」


 可哀想に、小動物の様に震えている。……可愛いな。


「間に合って良かった……」


 出て行くタイミングを見ていたのだけど、怖がらせてごめんね。


 俺は手を伸ばすと、安心させる様に彼女の髪を撫でた……より念入りにマーキングする為に。

 よし、完璧だ!


「彼は俺が連れて行くから、君はもう行っていいよ」

「あ……はい」


 これで、彼女に好印象を残せただろう。


「あ、あの……本当にありがとうございました」


 彼女は僕に向かってペコリと頭を下げると、次の教室へと走って行った。

 走り方も可愛い。


「さて……と……」


 俺は再びグレイに向き直る。

 相変わらず青い顔で震えているが、全然可愛くない。

 寧ろ、憎しみしか湧いてこない。


「リルに手を出して……どうなるか、分かっているよね?」

「リヒト様!お許しを……っ……」


 こうなる事が分かっているのに、何で彼女に手を出しちゃうのかな。




 放課後、俺はグレイの処分を伝えにリルを訪ねていた。


「あの、わざわざ教えに来て下さって、ありがとうございます」


 いいんだよ。君に会いたかっただけだから。


「グレイはもう学園にいないから、安心して学園生活を送って欲しい」


 学園どころか、もうどこにもいないけど。


「はい……」

「本当は君の担任を経由して連絡しても良かったんだけど、あまり他の人に知られたくないことかなと思って……」

「はい、本当に、何から何までありがとうございました」


 彼女は何かお礼をさせて欲しいと言ったが、紳士らしく断った。

 しかし、本当はとても心が揺れ動いた。


 彼女の中で俺の株はきっと鰻上りに上がっているだろう。


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