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十二の記憶  作者: 緋絽
紅の勾玉
4/11

運命は重なりて道を急ぐ

夕です。

夕も本編書かせていただきます。

玉玻と叉璃が競うように先を駆けていく。

森を抜けた。

「玉玻、叉璃ー。調子のってると鳥に食われるぞー」

ちいぃぃ!と長い鳴き声をあげて二匹が戻ってきた。

慌てて岳の肩まで這い上がる。

叉璃のほうが、怖い、岳が怖い、と嘆いていた。

「…それ」

「あ?」

岳の斜め後ろをのんびりと歩いていた進が、ポケットに手を突っ込んだまま、足を止めた岳のほうへ近づいてきた。

「そいつら、今の劵族か?」

玉玻が、ぢい、と威嚇する。

「そ、もっといるけど残りは巣に残してきた」

「そうか」

それだけ言って進はまた歩き始めた。

その後ろ姿を見て岳は眉を寄せる。

何が言いたかったのだろうか。

「なあ、丑」

丑の記憶を継いでいる進の歩みはあまり速くない。岳は直ぐ様追い付いた。

「丑の劵族は?」

「いない。連れてこなかった」

「何で。前の丑の時は乗ってただろ」

前の丑、その前の丑も、決まって劵族である牛に乗っていた。

大きな劵族を持つ干支はそれに乗って競う――神の社を目指すことが多いのだ。そのほうが他の干支よりも早く神のもとへたどり着けるから。

「お前は牛に好かれなかったのか?」

岳がそう言ってニヤリと笑うと、進は微妙な表情になった。

「干支は嫌でも劵族に好かれるだろう。おれも同じだ」

好かれる、と言うよりは、崇められる、と言ったほうが正確かもしれない。

今世の代表に期待し自ら集まってくる。

玉玻と叉璃もそうだ。

「ふーん。じゃ、なんで」

「…今までおれ――いや、丑に仕えてきた牛達は皆死んできた。殺された」

進の目が一瞬鋭くなったのを認める。

(ねずみ)も牛を殺したことがある。

そうして移動の術を奪った。

「だから今度は死なせない。そしておれの代で丑の呪いを終わらせる。…龍の一族のようにはしたくないからな」

「……なるほどね」

「ああ」

龍の一族。

やつらが滅んだのは何回目の時だっただろう。

強大な力を持ち、人間すらも怖れていた龍の一族は、ある時呆気なく滅んだのだ。

理由などは興味なかったけれど。

「俺は鼠を死なせる気なんてさらさらないけどな」

そう言った岳に子鼠二匹は擦り寄った。

そんな様子を見ていた進はまた無言で歩き出す。





その夜。

河を見つけるとその近くで火を起こした。

岳と玉玻、叉璃は火の周りに、進はというと河岸に腰を下ろしていた。

「今度の丑、へんなやつだよな」

「ちい」

「子についてくる丑、か」

「ちぃ…」

ふたりの間には距離があって、こちらの声が聞こえているのかはわからなかった。

「なんかこう、ぼーっとしてるし?先代はあんなじゃなかっただろ?」

どちらかと言えば血気盛んというか。

目的のためには手段を選ばないやつだった。

特に子が相手だと。

「ちょっと聞いてくる。お前らは?行くか?」

聞くと玉玻はやだやだと首を振る。

叉璃も逃げて岳から離れた。

初めて今世の丑を見たときから、何か感じたのか、二匹はこの調子だ。

仕方なく子鼠を残し岳は河岸へ向かった。

「丑」

座っている進を見下ろして声をかける。

「…なんだ?」

欠伸をしながら進は首だけ振り返る。

「単刀直入に聞くぞ。今世の丑は、(おれ)を殺すつもりがないのか」

「………は?」

「丑は子を恨んでいる。昔からずっとそうだったただろ」

最初に神の社へたどり着いた子、そしてそのすぐ後ろで唇を噛んだ丑。

その記憶が進にもあるはずだ。

因縁。

それが2種族の間にはある。

「…まあ、座れ」

「ああ?」

隣に座るように促され、岳は半眼になる。

やっぱり、こいつはへんなやつだ。なぜ今の流れで隣に座れになるのだ。

「…………」

「………………」

それでも岳は砂利の河岸に座ることになる。

こいつはきっと俺が座るまで沈黙を続けるだろう。

干支の隣に立ったり座ったりするのは極力勘弁してほしいのに。

「もう一度聞く。丑は俺を殺すつもりがないのか」

進は考え込むような表情を作った。

ソレを見て、やはり、と思う。今までの丑は子を見つけるなり殺気を撒き散らして突っ込んできた。

考え込むようなことなど有り得なかった。

「今はわからない」

岳は溜め息をついた。

「まずは朱凰山までたどり着かなければならない。岳が必要かどうかはそこで決める。おれ達も学んだ。ひとりでは勝ち残れない」

「それ信用でき…って、おい丑!今俺のこと何て言った!」

「……岳?」

ぞわっと身体中の肌が粟立つのを感じた。

「気っっ持ち悪ぃ!!気持ち悪ぃ!なんでいきなり名前で呼ぶんだ!」

「自分から名乗っただろう。子都岳」

訳がわからないといった風に、岳が自分からじりじり離れていくのをただ見守るだけの進。

たっぷり数メートルの距離をとったところで岳は叫んだ。

「明日から別行動だ!」




その次の日のこと。

結局、鼠をつれたふたりの青年が目撃された。




更新が遅くなってしまいました。

読んでくださってる方、すみません。


次は緋絽さんです。

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