新たな仲間
遅くなりました、秋雨です!
うっそうとした森の中、玉玻と叉璃を肩に乗せて、獣道をスイスイと歩く。
これといった印はなく、下手すればすぐに迷ってしまいそうだが、岳は道順が分かっているかのように、全く迷うそぶりを見せない。
しばらく進んでいくと、玉玻が小さく鳴いた。
「しっ。少し黙ってろ」
玉玻を手のひらで軽く押さえ、周りの気配を探る。
―――――――いる。俺と“同じ”奴が。
にい、と口元を歪めると、気配のするほうに向かって声をかけた。
「そこにいるんだろ?出てこいよ」
そうだそうだ、と言わんばかりに、ちいちいと鼠が鳴く。
前方の木がガサリと揺れて、男が降りてきた。
男は、じいっと岳を見つめて、口を開いた。
「お前は、子だな」
疑問ではなかった。
「ああ、そうだ」
岳の声は、どこか楽しそうだった。
「………そうか」
ちい、と叉璃が鳴く。
それが合図だったのように、男が一気に距離を詰めてきた。
その勢いを殺すことなく、岳に向かって蹴りが繰り出される。
それは、余裕で避けられた。
「相変わらず鈍足だな、丑」
「うるさい」
その男と同じ存在である岳は、初めから男の正体はわかったいた。
その目的も。
「もっと速度を上げないと、俺は殺せないぜ?」
そう言うと、相手の動きが止まった。
「………やっぱりやめた」
「……は?」
ふあーっと欠伸をする男に、目を丸くする。
「おれを、連れて行け」
……この男は、今、何て言った?
「どういうことだ?」
「そのままの意味。おれを連れて行け」
男の表情は変わらない。
「ちいちい」
どうするの?と玉玻が問いかける。
「ははっ。お前、面白いな」
口元が緩むのを抑えられない。
「いいぜ、一緒に来いよ」
すっと手を伸ばす。
「ああ」
男がその手を掴んだ。
「よろしく、丑」
「…………道丑進だ。お前は?」
きゅっと眉間にシワを寄せ、男――――進が言う。
「名前なんかどうでもいいだろ?」
どうせ呼ばないんだから、という言葉は呑み込んでおいた。
言わなくてもわかるだろう。
「一応聞くだけだ」
「あっそ。まあいいか。俺は子宮岳だ」
「そうか。よろしく」
「「ちい」」
それに答えるように二匹の鼠が鳴いた。
次は夕さん!