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ユリスのほうが笑い出しだ。
「ふ、ふふふふ。ウリウス様。懐かしいわ」
ソハカはびっくりしてウリウスの心から意識を離した。ユリスを見た。ユリスは今ウリウスの心を見ていたのだと分かった。ソハカはなんだか恥ずかしくなった。
「あの、ユリスさん、すいません何だか、お見苦しい」
「いいえ。ウリウス様ってとっても面白い方。あの時もとても親切にしてもらって、嬉しかったわ」
「そうなんですか」
「ええ。あなた、ウリウス様と大変親しいようね。ところでお名前は?」
「あ、あの、すみません。ソハカと言います」
「ソハカさん……ユリスと言います。よろしくお願いします」
ユリスは少しだけ首を傾げるようにしてにっこりした。ユリスが自分を子ども扱いしていることがソハカにも分かった。だが、そう思われても仕方ないかなとソハカは思った。むしろそれは嫌な気分ではなかった。
「ユリスさん。実は私の友達が、あ、友達といってもその人はもう立派なおじさんですけど、とにかくその人がその、こことは別の世界に逝ってしまった親友を探していまして」
「はい」
「それでウリウス様に、あなたのことを聞いたんです。もしかしたら、その手掛かりになるのではないかと、お話を伺いに来たわけです」
「はい。そうだったんですか。でも結局、私もあの子と話せたのはたった一度きりで。それも、今となっては夢だったのかな、って」
にこやかに話しているが、ユリスの心には悲哀の色が覆っている。ソハカは聞くのが辛くなってきた。
「それは、本当に夢だったんでしょうか?」
「いいえ。確かにあの子と話をしたと思うんです。今でもその実感はあるの。あれは私の夢や想像なんかじゃなくて、本当に、確かにあの子の心を感じたはずなの。それくらいの区別はあの頃でもはっきり分かる。あれは絶対夢なんかじゃない」
「……」
「でも、そんなことあり得ないって、頭では分かるんです。だって、いつまで待ってもあの子が天にいるという知らせはないし。探してみたんです。あちこち回りました。でも、この世界にあの子がいるのなら、もう絶対に見つかっているはず。頭では分かっているの」
いつの間にかユリスから笑顔が消えていた。悲愴な面持ちをソハカはじっと見つめた。ソハカはしかし、同情や憐憫よりもなぜかそのユリスの表情を、美しいと思った。笑顔ももちろん素敵だが、悲しい表情がもっといい。ソハカはいつの間にか無自覚にそんなことを思ってしまい、不謹慎だと考えて慌てて言葉を接いだ。
「もしかすると、それは本当にお子さんだったかもしれませんよ。いや、きっとそうだ。ウリウス様もそう考えているんです。それで、確かめに来たんです」