ソハカの楽観 1
ソハカが強く勧めるので、リギルは半信半疑ながらもとにかくウリウスとかいう男に会いに行くことに同意した。といっても、そのためにはそれなりの準備が必要だった。ウリウスがいるのはこの都市群ではなく、すんなり会えるとも限らないので事によってはしばらく滞在することになるかもしれない。ソハカのほうは町のさまざまな役務を請け負っていたので、それを放り出してすぐに発つわけにはいかなかった。
また、リギルのほうもウリウスに会う以上、せっかく一遇の機会を得ても不毛なやり取りだけで終わっては恥となると思った。ソハカが時々出かけるのでその間リギルはひとり資料を読み耽り、やみくもに知識をかき集めた。ソハカが戻るとリギルはまるで父親の帰りを待っていた幼子が絡みつくようにソハカを質問攻めにして離さなかった。しかしソハカは倦むことなくそれに付き合った。あるいは、ソハカは仲間を連れて家に戻ることもあった。これもリギルの役に立つかと配慮してのことであった。皆リギルのほとんど支離滅裂な疑問にも好意的に答えようとしてくれた。このように気力の続く限り議論し、それに疲れると風呂に入って存分に寝る。そんなことを何回も繰り返した。
「やはりどう考えても調整というものが現実にあるということは否定できないようだな」
「そうさ。そもそもクルの力が働かないなら我々の永遠の命も保証されないのだから。未だかつて天に来た人間で、再び死んだ者はいないのだから」
リギルは仲間たちとの議論のうちに、調整そのものが存在することは否定しがたいと感じるようになった。しかし、天での人間たちの素行については未だ納得できないでいた。
「確かに調整によって俺たちは守られているのだろう。だが、それとこれとは話が別だ」
己の欲求を満たすことに明け暮れ、互いに快楽を貪り合い誘惑し合う、そしてそれがクルの意思だと言って憚らない。何と不遜な生き方か。歪曲し、倒錯しているようにしか見えない。
「ここでの人々の行いがクルの目から否とされているなら、それこそなぜ調整されないのか。逆に矛盾を生じるではないか」
と仲間たちは言った。結局、何度も同じ論点を堂々巡りした。しかし、だれもやめようとはしなかった。それにはもちろんリギルへの同情と好意も含まれていたが、それよりも勝って彼らに共通するのは何事にも考えを突き詰めようとする気質であった。リギルは彼らとこうして話すことが楽しかった。