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天国のマセル  作者: 中至
ソハカの友情
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少し休んでから、ソハカはリギルを連れて自分の部屋に戻り、あらためて資料を解説しながらリギルに見せた。リギルは思い付くままにソハカに説明を求めながらさらに資料を読み進めていった。都度ソハカに確認できる状況だと非常に分かりやすかった。しかし、肝心の調整のことになるとソハカでも的確な答えは望めなかった。


「そもそも、調整というのはだれが言い出したんだ?」

「それは分かりませんね。でもたぶん引き合わせの人たちじゃないかな?」

「これを見ると、引き合わせというのは一番初めにこの天に蘇った人々ということになっているな」

「そう。彼らは天で特別な使命を負っています。本当は、天に入る資格があったのは彼らだけで、実際、彼らだけが天にいた時代が長くあります。その間には調整は起こらなかったと考えられています」


「そんなのどうやって証明できるんだ? その連中が勝手に言ってるだけじゃないのか? 調整されている自覚なんてできないじゃないか」

「その通り。これは一つの説に過ぎません。でも、僕はそう考えるのが一番妥当だと思う。まず引き合わせの人々が天で復活してこの世界の基盤を作り、準備ができた時点で僕たちふつうの信徒が来る。それが一番理に適っている。みんなが一斉にやってきたら、こんなに安定した暮らしを営むことは難しいと思います。クル教徒とはいえ、僕たちは引き合わせの人々ほど出来のいい信仰者ではありませんからね」


「腑に落ちん……出来がいい悪いなどで信仰を比べられるものか。そんなことだれも決められない」

「それを知っているのはクル御一人でしょう」

「そうだ。結局、人間の解釈なんだ……」

「まあ、そう言ってしまえばすべてそうですけどね」


リギルは少し考え込んだ。


「引き受けというのは、引き合わせの者が選ぶんだな? どうやって決める?」

「ああ、引き受けの基準は確か資料があったと思います。ええっと……ここにあります。」


リギルは資料の一つを取り出して手際よく操作すると、リギルに渡した。


「確か、信仰の程度と慈愛の精神、とかじゃなかったですか?」

「うん。そうらしいな……」


リギルは資料を目で追いながら答えた。それには、引き受けを選考する際の基準らしきものがこと細かに羅列していた。


「ん?」


技巧的基準、とある。その中には、快楽の供給、性的欲求の理解、性的処理、心理推察および快楽的誘導、などの記述が続いていた。


「何だこれは? ……」


リギルは、これではまるで娼婦ではないか、と言おうとしたが口にするのは憚られた。しかし、もちろん口にしなくてもソハカにはそのまま伝わった。


「別に強制的にやらされるわけではないですよ。むしろ引き受けに命ぜられることは非常に名誉なことです。それに、引き受けには当然男もいますよ」

「名誉と思うかどうかは人の勝手だ!」


リギルは思わず少し語気を強めてしまったので気まずくなってソハカの心を見た。ソハカは何も言わず笑っていたが、その心に冷たい感覚が読めた。

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