リギルの希望 1
リギルが死んで天国に移されたのはクセルたちよりもずっと後のことである。天にはリギルの妻もすでにいて、クセルたちは遠慮して妻が一人リギルを迎えた。リギルは妻に手を握られて目覚めたので最初、現世に生き返ったかと錯覚した。
ようやく状況が分かると、リギルはマセルのことを尋ねた。
「……マセルは、いないわ」
妻は少し目を逸らして静かに答えた。一瞬沈黙があった。妻は思い出したようにまた笑顔になって言った。
「でもみんな待っていたのよ。クセルたちがあなたに会いたがっているわ」
「そうか。では今すぐにクセルたちのところに行こう。どこにいる?」
リギルはすぐに会衆の仲間たちに会いに行った。最初は再会を喜んでいたが、話しているうちにリギルは激昂して言い争いになった。それはクセルたちのここでの素行に驚愕しただけではなく、それがマセルの犠牲に拠っているということがどうしても受け入れがたかったからだ。
クセルたちは一応リギルのための祝いの席を設けていたが、この様子では宴どころではない。妻がリギルを必死になだめて連れて帰った。
「予想はしていたが……リギルも相変わらずの分からず屋だ」
クセルが呆れた。
リギルは妻に向かって矢継ぎ早に質問した。妻も最初は笑顔だったが次第に辟易して
「ここは前とは違うのよ! 私だってもう昔の私じゃない。しつこくしないで!」
と突き放して言った。リギルは呆然となって妻の顔を見つめた。少し泣いているようだった。
「……すまない。俺はこれからどうすればいい……?」
リギルはすっかり困惑して力なく尋ねた。
「じきに引き合わせの人が来るわ。聞きたいなら、そこで聞くといいわ」
その時、まるで待っていたかのように、婦人が訪ねてきた。四十過ぎの小奇麗な、それはクセルをイラに引き合わせたのと同じ婦人だった。
「リギル様、ぜひお会いしたいという女がおりますので、少しお付き合いいただけないでしょうか?」
リギルは状況がよく分からないので妻の顔を見た。
「心配ないわ。行ってらっしゃい、あなた」
妻がそっけない表情で促した。