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クセルは人目を憚ることなく足繁くイラの家に通うようになった。仲間たちに聞いたところ、皆同様に思い思いの相手と交わっていることが分かった。クセルは大いに安心した。だんだん遠慮がなくなり、いつかクセルはただイラの体を貪るためだけに訪れるようになった。
クセルはいつものようにイラで存分に自分の欲求を満たした後、ふと思い付いて尋ねた。
「イラ。お前はなぜこのようなことを引き受けるのだ?」
「私は私の望みに従っているだけです。クセル、あなたもそうでしょう? それでいいのです」
結局、クセルの疑問は時とともに薄れつつあった。というよりクセルはいつの間にかそんなことはどうでもよくなっていた。
天の人々は、自分たちはすでに罪から解放されているのだと考えた。それが罪に当たるか、クルの意思に反するかなどと都度意識する必要すらなく食べたいものを食べ、得たいものを得、満たしたいものを満たし、自分の好むものを愛した。たとえば自分に好ましいと思う異性を誘惑すれば思う通りになった。他人を虐げ貶めたいというような衝動を抱く者にはそれに適う人物が現れた。人々はこれをクルのご意思によって調和が生じている結果だと考えた。
「クルが儚き人の思いを調えて下さるのだ。ここにはもう罪も、死もないのだ」
クセルもイラと関係を持ってから罪悪感を抱くことは少なくなっていった。他の者と同様、クセルの行為はより倒錯的になったが、イラはクセルがどんな欲望を抱いてもそれを受け入れた。また、クセルがイラ以外の者と関係することも咎めなかったばかりか、むしろそれを助けた。
このようにして人々は食べたいものを食べ、得たいものを得、満たしたいものを満たし、自分の好むものを愛した。