12
「死んだ……のか?」
誰かが、振り払うことのできない言葉を口にした。もちろんほとんどの者が同じことを思っていた。ついにマセルの心が完全に見えなくなってしまったからである。
「死は……この地でも起こるのか?」
「だが他にどう解釈するのだ……」
だが他に考えようがなかった。少なくともマセルの心は本当にこの地から消えたのだ。まるでこの地の全体が沈黙に包まれたかのようであった。
しかし、不意にタミルノが
「あっ!」
と声を上げた。
「誰か……来る。この地に、誰かが復活する」
「なんだと?」
「それは、それはマセルか!」
周囲の仲間たちが驚いて駆け寄った。
「いや違う。知らない時代の人間だ。それに、すぐにではない。しかし大勢だ……夥しい数だ! 人々が……再びこの地に復活し始める!」
俄かに信じられなかった。しかしタミルノの感覚は確かにそう告げている。タミルノは今までにこの予言を外したことはない。
仲間たちは、なぜ今、突然にそれが現れたのかと怪訝な表情でタミルノを見た。しかし答えようがなかった。タミルノ自身驚いていた。仲間たちの顔を見回すしかなかった。
すると、一人座り込んでその様子をぼうと眺めていたヌルが、いきなり立ち上がって大声で言った。
「分かった! マセルだよ!」
仲間たちははっとして一斉にヌルを見た。
「お父さん! きっとマセルが戻ってみんなに教えたんだ。クルの言葉を! 死んだんじゃない! マセルは生き返ったんだ!」
(おわり)