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「お父さん、イリアエルさんたち、もうすぐ戻ってくるんだよね?」
「ああ……」
マセルの率いる隊がここまで引き返すと聞いてもヌルは浮かない顔である。肝心のマセルの心が乱れていて何を考えているのかはっきり掴めないからであった。
「マセルも来るんだよね?」
「ああ……」
タミルノは曖昧に返事をした。実際にはタミルノもまたマセルの心が理解できずにいたが、イリアエルや他の仲間たちの心を見れば、隊が撤収してすでに帰途にあることは間違いないと思われた。タミルノもこの段階では、まさかマセルが隊から離れてたった一人で行動するとは想像していなかったのである。ただマセルの心に映る言葉や感覚からして、戻るとか戻らないとか……そういう点とは別の何かに執心して不毛な自問自答を繰り返しているように思えた。少なくともタミルノにはそのようにしか見えなかった。
「マセル……早く帰ってくればいいのに」
イリアエルや他の仲間たちの心にもマセルに関することがほとんど浮かばないので推測しようにも手がかりがなかった。ヌルはタミルノの表情に釣られてううん、と渋い顔で唸ってみせた。
「何か様子が違うが……まあでもイリアエルたちも一緒なんだ。そんなに心配することはないだろう」
タミルノはひとまずヌルを安心させようと笑顔を作った。
この拠点はますます資材が備えられ、小さな集落と呼べるほどになっていた。クル像を中心に会合するための広場がそれらしく設けられ、それを取り囲むように数人ずつが暮らせるほどの屋根のある簡易な家屋がいくつも建てられていた。もちろん、探索に参加した者たちが帰ったらすぐに使える分も真っ先に設えてあった。