マセルの執着 1
隊はマセルの回復を待つためにしばらく留まった。マセルはまた仲間と離れてずっと地面に寝転んでいた。そのようにマセルが一人ぽつんといること自体は珍しいことではない。ただし以前はたいていの者がそのマセルにほとんど無関心だった。今はそうではない。むしろ全員がマセルの悩みを共に抱え、その氷解を待って見守っているかのようであった。
「……リギルとは、死の直前とはいえ確かめ合ったはずだ。もちろん、失った時は取り戻すことはできないが。でもずっと友であったのは確かなのだ。それは変わらないのだ永遠に。
……永遠に?
永遠に友であるということは何だ? それは何を意味するのだ。何も意味しないではないか。だいたい、リギルが今も同じ思いでいるという保証もない。俺自身も同じだ。過去そうであったからと言って、ずっとそうであるという保証はない。
……いや、だから何なんだ。
それは別に悲しいことでも虚しいことでもない。ずっと友でいたい、そう考えたことすら今まであったか? 俺はそんなことを望んだことはない。ならば何を怖れる」
マセルは迷っていた。自分自身の心の向かう先が半ば見え始めているような気配があった。しかし、それはまだ漠として到底言葉に出来なかった。
「俺が持つというその怖れとはいったい何に対する怖れか。親しい人を失うという怖れなのか? だがそれなら自分でもすぐに分かるはずだ。
むしろ、俺はすでに嫌というほど失ってきたのだ。しかし、それがどうした。確かに心が痛んだ。しかし、それは怖れるのではない。心が痛むのは当たり前だ。だからと言って怖れるものではない。きっと違う。
……俺はこの地に再び生を得たのだ。おそらく永遠と呼べる生を得て。そうだ。ここで前とは比較にならぬほど逞しく、真摯で、圧倒的な思いと、力と、信仰を持つ者たちとともに、この地で生かされている。そして怖れる? もはや失うことすらあり得ないのに。
イリアエル……。
やはりこの地こそ、クルの地。天。
……。
だが、ここにリギルはいない。
……。
いや待て、それがどうした。それは別に構わないのだ。本心では望んでいるのか?
いや、そうだろうか。少なくとも意識の表層で俺はそんなことを微塵も思ったことなどない。あいつはあいつだ。あいつがどこにいようとそれもクルの計らいだろう。それにあいつが強くなろうが、弱いままだろうが友は友だ。いや、もはやそれすら関係ない。確かなのは過去に友であったということだけなのだ。
……いや待て。あいつは弱いのか?
リギルは本当に弱いのか?」
マセルは目だけを見開いたまま、死んだように動かなかったが、内心自らに問うては自ら反論するように目まぐるしく考えを巡らせていた。空は薄暗く夜明けとも日暮れとも取れる色をしていた。




