2
マセルは次にタミルノに話そうとしたが、タミルノはすでに知っていたようだった。
「一応の人選はすでに済ましておいた。後で集めるから会っておいてくれ。簡単な携行品の準備もキダに頼んである」
タミルノは出立をむしろ急かすように言った。
「イリアエルだが……あいつは行きたくないと言ってる。どうする? マセル。今となっては、いっしょに行く意味もなくなった気がするが。お前に任せる」
マセルはすぐにイリアエルのところに行った。イリアエルはいつもと同じ場所で両手に余るくらいの粘りのある泥のような塊をこねくり回していた。自分で作ったのだろう腰掛のような一つの塊に座っていた。
マセルはほとんど表情を変えずに言った。
「出立だ、イリアエル」
もちろん聞こえていた。だがイリアエルはしばらくの間こねくり回すのをやめなかった。マセルはそれをしばらく見ていた。
「面白いのか? それ」
「ああ! 面白いね……目当ての物はぜんぜんできないが」
イリアエルは不釣り合いに勢いよく言った。
「しかし俺はいつか必ず見つける。光源を断ち切るほど強い剣の製法を。必ずな。時間はいくらでもあるんだ」
「ああ。その通りだ。時間はある。だからいっしょに行こう」
「何の魂胆だ。それに、そもそも……お前何のために行こうと言うんだ。もう俺に説教は不要だ。俺は見つけたんだ。自分がすべきことを。回り道はごめんだ」
「もう説教など。俺は頼んでいるんだ。少しだけ俺に付き合ってくれと言ってるんだ」
マセルは、立ったままであったがうなだれるように深く頭を下げた。イリアエルは驚いた。こいつは、何を今さらそんな真似をする。何のつもりだ。マセルはそのままじっと頭を下げていた。イリアエルはみぞおちの辺りが勝手に動くような痒いような感じがして急いで言葉を繋ごうとした。
「おい……おい! 何をしている! 俺に頭など下げるな。俺に構うな。お前はお前で勝手にしろ」
マセルはやっと頭をあげたが、今度は急に半ば睨むようにイリアエルの顔を直視していた。怒りを押し殺しているようであった。イリアエルは心配になって、マセルの心を読んだ。
俺はお前と行かなければならない……なぜかはよく分からないが、マセルの思いは強かった。それになぜかとても怒っている。イリアエルは動揺した。マセルの怒りに反応するように反射的に言葉を吐きそうになった。だが、思い直した。
ここに至るまで何度も繰り返していた言葉が突然過ぎったからである。
「太く……もっと太くならなければ」