イリアエルの詮索 1
ナモクたちが残る本拠地では、発見されたクル像を巡って何度か会合があった。と言っても、それはそのクル像をどう扱うべきかというような議論をするためではなく、この地にいる人々が住む場所や集落の様子がどうなってゆくかというような先々の展望や方針についてざっくばらんな意見を交わすことが主で、ナモクは参加したりしなかったりした。
概ねそれぞれの思い通りにするのが良かろうという者が多かったが、仮に人々が分散して各地に住むようなことになっても、現世においてしばしば見られるようにそれぞれが別の会衆として分立するのは避けようという意見が出た。この地の人がこれ以上増えない状況では、今いる者はすべて今の通り一つの会衆と考えるべきであろう。これに異議を唱える者はなかった。
ナモクはこれについて特に何も指図しなかった。ただ、今現在各地に散っている各隊については現状の指示通りもうしばらく探索を続けることを命じた。
もとよりマセルは以前から最初の案の通りここからさらに離れて探索を進めるつもりであったが、ナモクの指示を待つまでもなく今もうその機が熟したような気分になっていた。何の根拠があるわけでもないが。何かもう、自分がここですることがないような、これ以上ここにいる理由が思い付かないような気分であった。
ただヌルのことが少し気にかかった。
「ヌル。俺はそろそろ行くつもりだ」
ヌルはうんうんと頷くように曖昧に首を揺らしたが、納得した表情ではなかった。しかし、納得できる説明などできるはずもなかった。マセルは黙っていた。
「ここにいたくないの?」
いたくない、という訳ではない。しかし、なぜか留まっていてはいけないような気分はある。マセルは黙っていた。
「うん。何となく分かるけど。……どうしても行きたいの?」
そう聞かれても困る気がした。行きたいのかと聞かれれば、別に自ら行きたいという訳でもなかった。
「じゃ、じゃあさ……もし行ったら、この先に何があるの?」
何も答えられるはずがなかった。何があるのか? 何かあるのか、何もないのかすら見当が付かないのだ。だが、マセルの内心に浮かんでいるぼうとした使命のような、必然のような選択に抗う理由をヌルもまた見つけられなかった。