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天国のマセル  作者: 中至
ヌルの確信
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ヌルの確信 1

念のためタミルノはクル像を製作するためにナモクの意向を確かめた。案の定ナモクは


「まあ、いいんではないか? 反対するつもりはない。好きに計らってくれ」


と答えた。タミルノはすぐに主だった者たちにそれを話した。だれも反対しなかった。


ただしイリアエルは多少の懸念を示した。クル像は本来そもそもの本拠地にあるべきではないかという点と、もともとアジョ派に属していた者たちが各々携帯している小さなクルの肖像の扱いをどうするかという心配であった。


しかし周囲の者たちがそれを重く受け止めないと知ると、イリアエル自身もあっさりと言った。


「俺は一応の意見を述べただけだ。別に俺としてはどうでもいい」


今のイリアエルは、自分の意見が取り上げられるかどうかなど関心がなかった。そんなことよりも光源の加工に夢中だったからである。


タミルノは久方ぶりに拠点にいる全員を招集した。そしてここに自分たちの手でクル像を作ると宣言すると人々は大いに湧き上がった。実際には今に至るまでクル像を作るなどということを企てた者や、それを望んだ者すらほとんどいないのにである。


おそらく、多くの者は大きく、はっきりした目標を得たことで興奮しているのだとタミルノは思った。クル像の製作が実はマセルの心の根底にある怖れというようなものと関わっているのだと知っている者は、タミルノやイリアエルやヌルの他ごく僅かな者だけであった。


その目標が出来てから拠点の人々は今までになく光源の採取に精を出した。集まる光源の量は見違えて増えた。それは単に像を立てるためだけならば十分過ぎる量に達した。しかし、人々は今初めて具体的に思い描いたのである。ここにクル像があり、皆が集う会所があり、庭があり、それぞれが過ごす寝所がある……この場所がいずれそのようになるのだという、その姿を思い描いた。


人々は同時にクル像の材料となる石の製法についても各々の伝手から多くの知識を集めた。現世のそれのように自然石を使うことは叶わないが、何度か試すとそれに近い材質を作り出すことができた。また、それについて語らう中で人々はクル像の姿態の完全な一致に気が付いた。つまり各々が生きたどの時代でもクル像の形状が酷似していることに気が付いたのである。

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