10
マセルとヌルは連れ立ってタミルノのところに戻った。タミルノは何人かの者と談笑している最中だった。その間、二人は脇に座って、二人並んでその様子をぼうと見ていた。やがてタミルノは二人が自分と話す機会を待っているのだと感じて話を切り上げた。
「二人ともどうした? ぼうっとして」
タミルノは少し笑いながら聞いた。何もせずただ座って待っているその様子も変だとおもったし、ヌルが近頃はマセルと面と向かって話のを避けているようだったのに、今はまるで寄り添うようにじっと並んで座っているのが愉快だった。
「ヌル、マセルと話したのか?」
しかしヌルはううんと首を横に振った。代わりにマセルが答えた。
「直接話したわけじゃないが……な、ヌル」
ヌルは今度はうん、と首を縦に振った。
「それで実は相談なんだが……」
マセルは続けた。
「ヌルの考え通り、クル像をここに作らないか? 現世にあったのと同じ、あの像を俺たちの手で」
それを聞いてタミルノは初めて合点がいったような気がした。つまりヌルが言うように、直接話はしていないが、互いに気持ちが通じ合ったような気がしているわけだ。この二人は。
タミルノはあらためてヌルの目をじっと見て、その次にマセルの目も同じようにじっと見て、そして言った。
「なるほどな。だがそれは俺の一存では決めかねる。よし、みんなに諮ってみようか」
タミルノがそう言うと、マセルは隣に座っているヌルの肩をがしと抱いて何度か揺すった。ヌルは照れているような、それでいて誇らしげな顔でマセルに揺さぶられながらタミルノに向かって笑顔を返していた。