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イリアエルは、自分で足繁く光源を集めに行くようになった。まずキダに教わった方法で、水に変化する寸前の粘着性のある光源を作り、それを採って来たばかりの光源と混合することで金属然とした物質を作ることにはすぐに成功した。捏ねて固まり始める段階でそれを箱状に整え、光源を混ぜたり、一時的に寝かせておいたりする容器にした。やってみるとなかなか面白かった。ただし、その材質はとても光源を斬るほど硬いようには思えなかった。
イリアエルは最初、この方法を少しずつ変化させることでだんだん、より硬質な物質を編み出していけば良いと考えていた。しかし、キダはそれを聞くと嗤って
「それじゃあ、目当てのものは到底できないだろうな」
と言った。
「だから言ったろう? 天光源に常識は通用しないんだって。似たような方法を究めていけば、より良い質が得られるって考えがそもそも通用しないんだ」
嘲るような言い方だったが、それでもキダはイリアエルと話した後本拠地にいる市場の仲間と疎通して、金属的な材質を得るための、いくつかのまったく違うやり方を聞いてくれていた。
「分かったかい? そもそも何ができるかってのは、言ってみりゃまったくの偶然なんだ。理屈で作ろうとしてもだめなんだよ」
「そうか……分かった。ありがとう」
「じゃ、せいぜい頑張りな」
イリアエルはこの作業に没頭することが多くなった。ヌルが時々様子を見に来たが、イリアエルが誘ってもヌルは光源の採取に行こうとはしなかった。
「剣はできそう?」
「いや、まだ始めたばかりだ。ぜんぜんだめだな」
「そう。おじさんでも無理なんだからね。でも、いつかできると思うよ。イリアエルさんが」
「ありがとうな。ヌル。お前も、最近いろいろ考え事してるようだけど?」
ヌルは少し俯いて首を横に振った。
「……そうか。まあ、急ぐことはないんだ。お前も頑張れよ」
ヌルはそれには答えずにいた。