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「このまま放っておくともっと硬くなる。俺が知ってるやりかたはこれだけだ。本拠地にいる仲間ならもっといろいろ分かると思うが、俺はどっちかっていうと、喰いもん専門なんでね」
キダは自分の手に少しついたそれを払い落としながらにっと笑った。
「触って大丈夫か?」
「ああ」
イリアエルは地面に落ちたそれを指先で撫でてみた。確かに、それはすでに金属のような塊になっていた。両手で持ち上げてみると、やはり相当重い。なぜ混ぜただけでこれほど重さが変わるのかイリアエルは解せなかった。キダはそれを察して言った。
「現世での知識はほとんど役に立たない。考えるのは時間の無駄だ」
「……らしいな」
「思いついた方法をいちいち実際に試してみるのが一番いい……あ、だが地面の土は光源と混ぜようとしても無駄だ。それに、木もだめだ。何度も試したが、あくまで光源だけの変化のようだ」
「ふうん……分かった。ありがとう」
立ち去ろうとするイリアエルに、キダは後ろから声をかけた。
「イリアエルさんよ。思えば、今まであんまり二人で話したこともなかったよな」
「ふっ、そうだな」
「あんた、話すと意外にいい男だな」
イリアエルは照れるような笑顔を見せたが、それ以上何も言わなかった。