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イリアエルは光源を次から次と眺め、時に撫でたり叩いたりしながらうろつきまわった。そして、ふと気が付いたように袋を取り出すと、乱暴に粉末を集め始めた。これを手土産に、光源の加工について話を聞きに行こうと思ったからである。
「ちょっと、いいか」
イリアエルは腕を突き出して光源の入った袋をキダに見せながら言った。
「なんだいイリアエルさん。ヌルに感化されて珍しく働いて来たのかい?」
キダはおどけるように笑った。ヌルがいつも「おじさん」と呼んでいる男である。
「いや……まあ、感化されたには違いないかな。キダ、あんた探索に来る前は市場で棚を出してたんだろう? それなら、知ってることを教えてくれないか?」
「ああ、剣を作るって話か……なあ、天光源を剣で斬るなんて」
「無理かもしれん。ただ、一度本気で試してみようと思ってな。それでちょっと相談に乗ってほしいんだ」
「そうかい。まあ気の済むようにしたらいい。で、何が聞きたい? 光源を切り裂くような剣なんて無理だぞ」
「無理かどうか、それを試してみたいのさ。とにかく、ここで光源の加工に詳しいのはあんたしかいない。知恵を貸してくれ。なるべく硬い材料を作るにはどうする?」
「ああ、しかし硬いと言っても……ちょっと待ってろ」
キダはイリアエルの持ってきた袋は受け取らないまま、光源を保管するための箱を順繰りに見回ると、その一つから何かを手ですくって戻ってきた。
「いわゆる金属のようなものならば、俺はこうやって作るんだ。あんたの採ってきたやつを貸してみろ」
イリアエルが袋を差し出すと、キダは右手に持っている何かぬめぬめと粘着するものを示して言った。
「あんたの光源を、この上に全部かけろ」
イリアエルは頷くと袋の口を開けて、自分が取ってきた光源をどさっとかけた。キダはそれをすぐに両手でぐにゅぐにゅと捏ねはじめた。するとすぐにそれは汚く黒ずんできた。キダは捏ねるのをやめて全体を楕円のように整えると、いきなり地面にそれを投げた。最初手に持っていた様子と違って、地面に落ちた時それはかなりの重さがあるように見えた。