3
イリアエルは自分の腰元まで立っている光源の一つを恨めしいような気持ちで鷲づかみにして呟いた。
「……もっと、もっと硬く、もっと鋭い剣があれば」
ふとイリアエルは知らぬうちに手を動かすのを忘れて自分の考えに没頭していたことに気が付いて、辺りを見回すとヌルの姿がなかった。
「ヌル!」
呼びかけたが返事がない。
「ヌルー!」
イリアエルはもっと大きな声でヌルを呼んだ。すると奥の方からヌルの声が聞こえた。
「なあにー?」
イリアエルは声のする方向へ歩き出すと、土のない部分へ入り込んだ。滑らないように一歩ずつ踏みしめるように進んで行くと、すぐにヌルの姿があった。
「ヌル。あんまり奥へ行くなよ」
「うん。分かってる、ここなら大丈夫でしょ」
「ああ……」
ヌルは光源で覆われた平らなところにあおむけに寝そべっていた。左手に袋を握り、右の腕全体を滑らせて地表に薄く積もったようになっている光源の粉を掻き集めていた。
「ぼくもういっぱいになったよ。イリアエルさんは?」
「ああ、まだ……」
イリアエルはまだほとんど空っぽの袋を見せて照れるように言った。
「じゃあぼくが集めてあげる」
ヌルは自分の袋をイリアエルに預けると、代わりにイリアエルの袋を取り、また同じように寝そべったまま腕で光源を掻き集めた。その様子をイリアエルはいつになく神妙な顔で眺めていた。
「ヌル……もっと鋭い剣を作れば、もしかすると光源を斬ることができるような気がするんだ」
もぞもぞと動いていたヌルの体がぴたと止まった。
「本当?」
「そんな気がするんだ。たぶん……ちゃんとやれば」
ヌルはそれには答えず、またもぞもぞと動き出した。イリアエルの袋がいっぱいになるまで、ヌルは黙って光源を集め続けた。イリアエルは黙ってそれを見ていた。