イリアエルの関心 1
「おじさん、また採って来たよ」
「おお、ありがとうな。光源集めはやっぱりヌルが一番だ」
ヌルは屈託なく笑った。
「でも、あんまり遠くへ行っちゃだめだぞ。滑ると危ないからな」
「うん、分かってる」
ヌルはよく一人でも光源集めに行ったが、あまり奥まで行かないように注意されていた。奥に行けば光源が地表を覆っていて採取しやすい。その代わり、踏んで歩くとわずかな傾斜や凹凸でもすぐに滑るので大人の脚でもごく慎重に進まなければならない。ひとたび滑り出すと止まらなくなってしまう。
天光源が本格的に蓄えられるのはまだ先だろうと思えたが、だれもあえて急ごうとはしなかった。急ぐ理由がないからだった。逆に言って、もし永遠という時間が保証されていないならば、ここに新たな拠点を設けることなどだれも考えなかっただろう。
ここに到着してからいったいどれくらいの期間が経過したのか、もちろん本拠地の者に聞けば暦を知ることは容易いが、その日付を知ることに意味を感じる者もあまりいなかった。
ヌルは一人光源集めに夢中だった。時々、柔らかい団子のような具がいくつか入った温かい汁を貰って食べたが、ある時ふと、それを両手で受け取って少しふうと吹いてから口を付けた時ふと不思議に思った。そうやっていつも自分ばかりが食事をして、大人たちが物を食するところを見ることが少なかったからである。
本拠地にいた時には大人たちはよく宴を催していた。もちろん、市場に行けば贅沢と言えるほどの多彩な品物がいつでも手に入った。だれも食べたり飲んだりすることに関心がなくなったわけではないだろうとヌルは想像した。
「みんな我慢してるのかな……だったら、もっとたくさん集めに行けばいいのに」
唯一の子供であるゆえに、大人たちはみんなヌルには特別にしてくれるのも自覚していた。そして、ここではだれも歳を取らないがゆえに、自分は永遠にそのような立場であることを少しだけ歯痒く感じるようになっていた。