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イリアエルは、その後しばらくナモクの様子を伺い続けていた。祈っていた時にはその内容がほとんど読み取れなかったが、それが終わるとある程度容易にナモクの考えていることが分かるようになったのでイリアエルは安心した。
「タミルノの言うように、表層で思考した場合には簡単に読めるが、深いところになると分からないということか……しかし、今までそんなふうに考えたことがなかったな」
自分の状況をそのように推測しつつも、とにかくナモクの心に集中するように努めていた。ナモクが一瞬でもこちらのことを探ってくれれば、意思の疎通が可能だと思ったからである。イリアエルは今、とにかく直接ナモクと話したいと単純に願っていた。
今の俺ならば、以前より少しはまともに話せるような気がする……イリアエルは今抱いているナモクへの想いを何か重大なもののように感じていた。それに、おそらくナモクもそれを好意的に受け取ってくれるはずだと期待していたのである。
ナモクが何人かの住人と話している。その時、おそらく住人たちがイリアエルのことを噂したのだろう、ナモクの心に一瞬イリアエルの名が浮かんだ。その後すぐにタミルノやマセルの名もナモクの心に現れた。
「おそらくこちらにいる俺たちの様子を少し気にしたのだろう」
とイリアエルは推測した。うまくすれば、話が終わった後にこちらの心を探るかもしれない、と期待を膨らませてイリアエルはじっと待った。
しかし、残念なことにナモクは住人たちと話し終わるとすぐに、ひとり考え事を始めたようだった。
「……俺はタミルノから学んだ。あいつと話していると自然に答えが浮かび上がってくるようだ。ふっ……最初はひどく悪態をついたが。本当、尊敬に値するやつだ」
イリアエルは心配になった。従前、ナモクはこのように一人思いに耽った後はたいていそのまま眠ってしまうのだ。
「……俺は自身の心の赴くままに統治する。この地ではそれが叶う。俺の居場所はクルに与えられたもの。タミルノに託されたもの。いや、会衆のすべての人に代わるものだ。ここにいるのは全員がクルの目に選ばれた奴らなのだ……」