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天国のマセル  作者: 中至
ナモクの本意
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「…………」


ナモクの心に触れている感じはあったがイリアエルにはナモクが今何を考えているのか読めなかった。


しばらく静かに待ってみたが……イリアエルはふと気になってタミルノに尋ねた。


「タミルノ。お前今ナモクの心が見えるか?」

「うん? ……」


タミルノがナモクの心を探ってその見たままを口に出して言った。


「……俺たちは一人ひとりがクルの配慮によって巧妙に集められました。俺はここで長として会衆の統治長として生きるために来ました。いやそうしなければ俺は生きることができないのだろう。会衆のために俺が立つのではなく俺は俺のために長として立っているのです。それがクルの」

「もういい。タミルノ」


イリアエルは言った。


「なぜ俺には読めない? ナモクの心が俺には見えなかったぞ。どういうことなんだ」

「うーん……俺にもよく分からんがナモクはきっと今祈っていると思うぞ。お前には読めないのか?」

「ああ何も見えなかったぞ?」


二人がしばらく黙りこんで考えているのでヌルが口を挟んだ。


「たぶん……きっと心が読める深さがみんな同じじゃないんだよ!」

「それはそうかも知れんな」


タミルノがヌルに向かって微笑んで言うとヌルも自慢げに微笑んだ。


確かに住人たちの内でも長くここにいるものほど相手の心がよく読める。それにたとえ同時であっても場合によって読める内容に差があることもしばしばあった。ただしそれは慣れとかその時の気持ちの有り様とかによる差というだけだ。


心に本当に深さというものがあるのだとすれば人によっては相手が表層で意識していないような真意まで見えたりすることもあり得るかもしれない。そういうこともあるかもしれない。もしかすると……


もしかすると、マセルは俺たちよりもずっと深いところまで人の心が見えてしまうのではないか? だとすれば合点がいくような気がした。イリアエルの心の底にある記憶や意識を俺たちより詳しく知ることができるならマセルが急にイリアエルを挑発したのも意図があって当然だろう。

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