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タミルノとヌルはしばらく呆気に取られていたが、近付いてイリアエルの様子を心配した。
「……大丈夫だ。たいした怪我はない」
イリアエルは腹に手を当てながら、それでもはっきりした声で言った。そして
「少し休む」
と呟くとその場を去った。
ふうと息を吐いてマセルが地面に座り込むのを見て、ヌルは少し怪訝そうな表情で言った。
「マセル、強いんだね……」
「そうだよ。それに、だれでも強くなれるんだよ……」
マセルはもういつもの顔に戻っていた。
「僕まだやったことないんだあ……あまり会所に遊びに行かなくなったし」
「そうか? なら、これからすればいい」
ヌルは確かめるようにタミルノの顔を見た。タミルノが笑って頷くと、ヌルも嬉しそうに笑った。
本拠地には僅かだが他にも同じ年頃の子がいたとマセルは思い浮かべた。しかし、そう言えば、ここでは子供たちは各々親しい大人たちと行動していることが多く、子供どうしが固まって遊ぶ光景は見たことがない。
タミルノが近付いてヌルの肩から背中を撫でて言った。
「いっぱい練習して強くなっていくんだぞ。そうだ、今度イリアエルに相手してもらえばいい。あいつに教わればきっとすごく強くなるぞ」
「うん!」
ヌルは喜んだ。