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天国のマセル  作者: 中至
イリアエルの誤算
133/292

マセルは人々に紛れて後ろのほうに座っていたが、近くにいた者は思わずマセルの顔を振り返って見た。


「聞いていたのか?」

「いや、まだ何も」


マセルが特に表情も変えずそう答えると、尋ねた男は肩をすくめた。マセルはたいていタミルノやヌルと行動を共にし、その信任も篤いことは周知である。しかし、マセル自身は寡黙で、何を考えているのかよく分からないところがある。概ね人の上に立って統率するような人柄ではない、と男は思った。


「編成はごく少数でいいと思う。人選が決まり次第出立してもらうつもりだ。俺からは以上だ」


タミルノはそう言って構わず言葉を締めた。その後、周囲からいくつか質疑があったが、タミルノは素っ気なくやり過ごした。


主だった者たちだけが残って、とりあえず必要な事柄や方向性を大まかに話し合った。現状ここにいる者たちの正確な把握、それに新たな役割の分担と指揮系統などが取り急ぎ必要と思われた。


その場ですぐ別働隊の編成についても検討され、10人程度とすることはタミルノの一存で決まった。だがマセル以外の人選については各人の意向を確かめてから決定することになった。


マセルはその様子を黙って聞いていたが別段何の希望も述べなかった。ただ、小隊とは言えマセルに任せることに不安を隠さない者もいた。マセルは何の申し開きも反論もせず黙殺したが、代わりにタミルノが諌めると、面と向かって反論しようとする者はいなくなった。


散会した後、マセルはタミルノの唐突な発表の意図を尋ねようと声をかけたが、タミルノは


「いや、ちょっと待っていてくれ」


とだけ告げて立ち去った。


タミルノは仲間たちと屯しているイリアエルを見つけると割って入っていきなり言った。


「イリアエル、お前もマセルといっしょに探索に行ってくれるか?」


イリアエルは少し驚いた。打診もなくいきなり勝手に決められているような印象を受けて少し腹が立った。しかし、タミルノはそれだけ伝えると返事も聞かずにさっさと立ち去った。


イリアエルは、探索に加わること自体は特に嫌ではなかった。しかし、タミルノの押し付けるような物言いを不思議に思った。一体何の魂胆があるのかと怪訝に思ってタミルノの心を読んだ。


直接の理由らしいものは何も分からなかった。ただ、なぜかタミルノは、イリアエルとマセルを一緒に行かせることに意味があると思っているようだった。


「マセル? いったい何のためにだ」

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