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「もしもみんなが言うように、復活後の世界が何層にも分かれているのだとしたら……」
マセルは半ば一人で考え事をするかのように呟いた。
今まで、現世ではいったい何人の人間が死んだのか見当もつかないが、その中でこの地に復活したのは千人にも満たない。ならば、人が死後送られる世界は全体でいったいいくつ必要なのか、それは途方もない数になってしまう。
もしそうなら、そもそもタミルノとヌルがここでまた出会えたこと自体が奇跡のようなものだ。まず偶然ということはあり得ない。あるいは、幼い子供は別なのか?
いや、だとしても、ではなぜヌルは母親でなく父親であるタミルノと共に分けられることになるのか? ならば自分はどうか? なぜシリはここに現れない? そもそも、ここで会った者たちの中で、自分の親や子と巡りあえたもの自体ほとんどいないのだ。いずれにしろ単純な区別ではないのだ。つまり、むしろタミルノとヌルのほうが例外なのだ。例外?
これは例外なのか? いや、これは例外なんかじゃない! マセルは思った。それは何らかの意図、いや意図というより意思、それとも配慮か……とにかく、俺たちが思っているように、ただ信仰の篤さとか、罪の重さだとか、そういうことで分けられているのではないのだ。おそらく……おそらくは、クルはそのお考えで俺たち一人ひとりを分けているんだ。そうに違いない。
タミルノはマセルが思い付いたこの考えに賛同して言った。
「そうかも知れないな。いやきっとそうだ……人々が復活する順序もそうだ。きっとすべてが配慮されている。俺には俺の役割があって、最初にここに来た。というより」
タミルノは思った。俺は最初に現れて、試され、この役目を引き受けると誓ったからこそ……ここにこうして生きていられるのではないか。俺は、クルのご意思を受け入れようと、この力に忠実に従ってきた。しかし、そうではなかったのだ。むしろ。むしろクルは俺がここで生きられるために、俺のためにこの役目を与えて下さったのだ。クルを呪い、疑ったまま死んだこの俺に……
「なあ、タミルノ」
「うん……」
「俺は、何か慈悲のようなものを感じる。もしこの推測が正しければ、クルは決して俺たちを罰しようとしてここに集めたのではないだろう。何かの配慮だ。俺たち一人ひとりに。俺はまだ見捨てられたりしてないんだ。俺も、お前も、他のみんなも。一人ひとりが助けられているんだ」
タミルノは頷いた。話を聞いていたヌルも同じようにうんと頷いた。ヌルはタミルノの膝から降りると地面に腰を下ろし、膝を抱えた姿勢で俯いて目を閉じた。ヌルが祈りを捧げようとしているのが分かった。
タミルノとマセルも、それに倣ってそれぞれクルに長い祈りを捧げた。