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仲間たちが立ち去ってもヌルはタミルノから離れようとせず、タミルノはしばらくヌルを抱きかかえるようにして座っていた。
「しかし……今の話では、お前たちが地獄に来る理由は特にないような気もするのだが?」
マセルは感じたまま言った。
「いや、俺は少なくとも死ぬ直前に迷い、クルにさえ呪いの言葉を吐いてしまった。それについて今さら申し開きをしようとは思わない。しかしな……ヌルは。本当に分からない。いや、どうにでも解釈することはできるが。なあ、俺はいつも不安に思っていた。もしかすると、ヌルがこちら側に分けられてしまったのは、俺がヌルとの再会をずっと願っていたせいじゃないかと」
タミルノが地獄に来てからの話はマセルも聞いたことがあった。ただ一人でひたすらヌルの復活を待っていたタミルノの心境を考えると、責める気にはなれなかった。
「しかし、長い間よく揺るがなかったな」
「いや、実際に何度も迷ったさ。特に、ヌルがもう天国のほうに復活していると言われたときには心を砕かれそうになった。でもまあ、俺はもともと思い込みの激しい質なんでね」
「ふっ、その思い込みのことを、人は信仰と呼ぶのだ」
「信仰か……あれは、今思えば信仰というよりは意地だな、狂信と言ってもいい」
「ふ、人の信仰なんて、そんなものさ」
タミルノとマセルは、それぞれに笑った。
「それに、もしそうだったとしても、それもクルの決めたことだ。言ったろう? 俺は結局、人はそれぞれ思い思いに、自分の信じたところに従って生きるしかないんだと思う。それは、ここでも同じだ」
「まあそうだが。しかし、ヌルのことを考えると、どうしてもな」
「気持ちは分かるが……でも、ヌルだって、こちらに来たことをむしろ良かったと思っているんだし。な、ヌル?」
いつの間にかヌルはマセルのほうを見て、話を聞いていた。ヌルは答えなかったが、僅かに笑った。
「ヌルはやっぱり、天国に行きたかったか?」
タミルノがもう一度強く抱きしめながらヌルに尋ねた。ヌルは少しくすぐったいように頭を傾げながら、言った。
「あのね、お父さんが、天国で待ってろって言った時。僕、本当はクルにお願いしたんだ」
ヌルは、いつもの自慢げな笑顔に戻ってタミルノの顔を見た。
「天国じゃなくても、どっちでもいいから、お父さんと同じところに行かせて、って」