3
タミルノもマセルと同じように地面に寝そべった。それを見て、ヌルも真似て寝そべった。3人して、しばらく何も言わず空を眺めていた。
「変わらないなあ。この空も」
タミルノは独り言のように言った。マセルは何となく、自分が死んだ時のこと、そして地獄に目覚め、タミルノとヌルに出会った頃のことを思い起こした。そして、タミルノやヌルは、自分よりもさらに途方もなく長い間この空の下で過ごしてきたのだ、と思うと不思議な気がした。
「お父さん。僕たち、やっぱりこのままずっとここにいるのかなあ」
「さあな、きっとそうなんじゃないかな?」
「ふうん……」
タミルノは隣のヌルの顔を見た。ヌルは少し笑みを浮かべてじっとタミルノの顔を見つめた。
「……タミルノは、最初ずっと一人でいたんだよな? ヌルが来るまで」
不意にマセルが確かめた。
「ああ、そうだ」
「当然、タミルノの次がヌルだったというのが偶然とは思えないよなあ」
「だろうな」
「俺が最後なのも、何か意味があるだろうな?」
「だよな……」
「タミルノ。俺は、もし何かがクルのご意思で図られたものだとしても、それを自ら求めようとは思わない。自ら求めれば人間の解釈が入り込む。いくら良かれと思ったところで同じだ。たぶん、本当に必要なら自然に事は調えられるだろう。お前の能力だってそうだろう?」
「ああ、俺もそう思う」
「だからな……だから、俺は、それぞれが思い思いに暮らすのが悪いとは思わない。むしろ、思い思いに生きるしかないんだよ。俺たちは」
正しいかどうかは分からないが、タミルノはその考えには一つの筋の通った理がある、と思った。
「……お前、やはり地獄に来たことを悔やんでいるのか?」
タミルノが尋ねた。
「さあ、どうだろうな? 後悔というよりも、自分の考えが信じられなくなったというか……やはり、どうあがいても、結局、人間の解釈からは逃れられなかった」
「そうか……」
しばらく、ただ空を眺めた。タミルノがふと思い付いて言った。
「なあ……俺がなぜ、地獄に来たのか教えてやろうか?」
「?」
「マセルお前、俺がどうして死んだのか、だれかに聞いたか?」
「いや? 他人の死に様なんて、喜んで話す奴はいないだろう?」
タミルノは心の中で、復活の前、つまり自分が死ぬことになった時のことをゆっくりと思い起こそうとした。ゆっくりと、平静に。それに気が付いたマセルも、静かにタミルノの心を捉えて目を閉じた。それを見たヌルもまた同じようにして父の心に集中した。しかし、ヌルは少なからず動揺していた。
「ヌル」
タミルノが呼んだ。しかし、ヌルは目を閉じたまま静かに答えた。
「大丈夫。僕も一緒にいる」
「そうか」