タミルノの信仰 1
その後、タミルノは初めて、この拠点にいる全員を集めた。彼らは各方面に分隊して進んでいたが、もともと探索隊の第一陣に属していた者ばかりだったので互いに見知った者が多い。一堂に会すればその総員は七、八十名と思われた。タミルノと各隊の主だった者たちが集まって立ち、皆それを囲むように座った。
第一声、タミルノがナモクからの指示をもとに状況を伝えた。
「大きく変更はない。探索も続ける予定だが、とは言っても、やはりこの拠点の構築が第一だ。みんな、今は光源を蓄えて基本的な設備を整えよう」
一同は黙って聞いた。
「それと、イリアエルのことだが、あいつは本拠を出て、今こちら方面に進んで来ているという話だ。ただ、本当にここまで来るか、分からん」
すると、タミルノのそばに立っていた一人が言った。
「聞いたところでは、あいつはナモクの下にいるのが気に入らなくて、逃亡したって話だぞ?」
「でも、ここまで来ていったいどうするつもりなんだろうな」
「イリアエルは、本当はここに新しい町を作りたかったらしいぞ? ナモクがそれを聞き入れなかったんで、勝手に始めようとしたのではないか?」
「でも、たった一人でか?」
他の者も各々知り得たことを話した。タミルノは一通り収まるまで待ってから、一同を制するように言った。
「確かに。確かにいろいろあるようだが、いずれにしろあくまでイリアエルの一存だ。何も変更はないし、他に別段何かあるわけではない。ナモクにも確認したので心配ない」
タミルノの断定的な物言いに、周りの者たちもその意図を感じ取って頷いた。
「分かった。よし、我々も憶測で騒ぎ立てることは控えよう」
「イリアエルのことだ。何も心配は要らん」
「ああ、そうだとも。何があろうと俺たちは仲間だ。イリアエルもずっと会衆の一員であることに変わりはない。みんなで見守ってやろうじゃないか」
その様子を見てタミルノも大きく頷いた。
もちろんこのタミルノたちの様子を、本拠地にいるナモクも気にしていた。イリアエルに対して不信や非難がほとんど現れないのでナモクは安堵した。ヌルが相変わらず心配そうではあった。そして、マセルは少し様子が違うようにも思えた。あからさまな非難や否定ではないのだが、何かイリアエルに対して一物あるかのような曖昧な感触が見て取れた。
「マセル……あいつは、やはり何か、異質な感じだ」
ナモクはあらためてマセルという男が持つ特有の心の有り様に興味と警戒心を強めた。しかし、それが具体的に何なのかは読み取れないし、まだ表現できなかった。