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タミルノは別隊の主要な者たちと今後の編成や作業の分担などを話していた。そこへヌルがやって来た。
「ねえ、お父さん、ナモクが呼んでるよ」
「何? 本当か」
タミルノは咄嗟に一度ナモクの心を確かめた。
「ん? 本当だ。ヌルお前、どうして分かったんだ?」
話していた周囲の者も不思議に思ってヌルをじっと見たが、ヌルは黙ってただ自慢げに笑っていた。
「まあいい。すまないが、話はちょっと中断だ。先にナモクと話してみよう。ちょうどいい。今後のこともあるしな」
そう言うと、タミルノは意識を集中しやすい所へ行こうとヌルを連れていったんその場を離れた。
「おおタミルノ。やっと話せたか。ぜんぜんこっちの気持ちが通じないんで、いい加減嫌になったぞ。
『大げさ言うなナモク。お前がそれほど几帳面な男か?』
ふん、まあしかし、ヌルのおかげで話が通じた。ヌルはなぜかとてもイリアエルのことを心配してくれてるようだが、どうかしたか?
『そうか? どうしてかな……いや俺にも分からん。俺もあんまりかまってやれなくてな。ならマセルが知ってるかもしれん。まあしかし、そんなことよりもだ』
そうだ。実はそのイリアエルだがな。あ、そう言えばヌルのやつ……あいつはなんで俺のことは呼び捨てにして、イリアエルさん、と呼ぶんだ? どっちかと言えば、ナモクさん、じゃないのか?
『はっ、そんなこと気にするなよ。他意はないんだ、仕方ないだろう? そんなことよりもだ』
別に気にしてるわけじゃないが。まあいい。とにかくイリアエルがな、副統治長を辞めると言って、こっちを出て行ってしまったんだ。それで、どういうわけかは分からんが、そっちの天光源を目指して進んでいるんだ。一人でな。まあ、あいつの心を見れば分かると思うが、いろいろ思うところはあるようでな。
『それは前から分かっていただろう? 何かあったか?』
まあな。いや、今回そっちで見つかった天光源のことで、みんなかなり浮き足立っていたので治めようと思ったのだ。
それが、肝心のイリアエルが……いつものように俺に反発するだけならいいんだが、どうにも打開できんと思い詰めたのだろう。
『なるほどな、他の住人たちの支援も期待できないだろうから、居づらくなったのかも知れないな』
まあそうだな。あいつはもともと少し細いところがあるからな……いずれにしてもだ、こっちは別段大きな騒ぎというわけではないから心配要らん。ただイリアエルのことをちょっと頼みたいんだ。まだ時間はかかるだろうが、奴に会ったら面倒見てやってくれるか? 奴はそれ以来まったくこっちの心を読もうとしていないんでな。何か伝えようにも、術がない。
『まあ、ナモク、お前が何か言ったところで難しいだろう。こういうことこそ、時間が解決するしかないだろうな』
まあ、クルのご意思に任せる、といったところだが……とにかくそっちに行ったら頼むぞ。タミルノ。
『ああ、分かった』
あ、ついでに……全体の計画はまだ変更なしだ。それと、そっちの天光源の扱いも保留でいいな。とりあえずタミルノの指揮に任せるから、適当にやっといてくれ。
『ああ、分かった』
じゃ、またな。時々はこっちも確認してくれ」