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天光源の発見を知ると、比較的付近にいた数隊がタミルノたちに合流していた。その中で最初にイリアエルの異変に気が付いたのは別隊の伝令役を務める若い男だった。男はすぐにタミルノに知らせようと駆け寄って大声で伝えた。
「ああ、タミルノさん。なんか、イリアエルさんの様子がおかしいんで」
「え? 様子がおかしいって、イリアエルが?」
「ああ、ちょっと、詳しくは分からないんだが……とにかく、いつものイリアエルさんとは、別人のような感じなんだ」
周りの者たちも何事かと集まってきたので男はもう一度説明したが、今分かっているのはとにかくイリアエルの様子がおかしいということだけであった。
タミルノはとりあえずイリアエルの心を読んでみた。他の者たちも同じようにした。イリアエルは絶え間なく何かを考え続けているようだ。
「だれもいない……信用できない?」
「俺は何だ、俺の存在理由」
「天光源?」
イリアエルの思考の内容は無方向で断片的ではあったが、いつもと違って個人的なことばかりのようだった。だれもが、それだけでも普段のイリアエルの様子とは違うということがすぐに分かった。
いつもならイリアエルはだれに心を読まれてもいいように思考を統制しているので、このように長時間一人きりで自分事に思いを馳せていることはない。それに、何か自分を責めているような、あるいは憎しみのような感情が伴っている。しかもそれはかなりあからさまで、抑制的なイリアエルにしては非常に珍しいことであった。
「……何かあったな」
同じようにイリアエルの心に集中していたマセルが、タミルノの顔を見て言った。タミルノは頷いた。そしてタミルノはイリアエルの心からいったん意識を離し、今度はナモクの様子を探った。ナモクならば、折が合えば会話できるかもしれない。他の者も、もしやと考えそれぞれに伝手のある者の心を読んで情報を集めようとした。
「だめだ、ナモクはこちらに気が付かない……」
タミルノは諦めていったんナモクの心を探るのをやめた。他の者たちも、すぐには何も掴めなかった。
「イリアエル……いったいどうしたんだ?」
「またいつもの、あれじゃないか? 最近ナモクさんと反りが合わないようだし」
「しかしな、明らかに様子がおかしいぞ」
仲間たちが口々に言い合った。ヌルだけは意味が分からず黙って怪訝な大人たちの顔を見上げていた。
「いずれにしても、ナモクとうまく話ができれば聞いてみよう」
タミルノは探索に出て以来何度かナモクと話をしている。あくまで体感によるしかないが、いずれかの時期にまた話す機会があるだろうと考えた。
「とにかく持ち場に戻ろう。ここで推測ばかりしていても始まらない。みんなも、何か確かなことが分かったら教えてくれ」