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「さて、残りのみんなは……今回の天光源の発見について何かご所見をお持ちか?」
ナモクは少し強い口調で尋ねた。なぜか気圧されてだれも何も述べなかった。何人かはイリアエルのほうを見たが、イリアエルもこの状況から急に自説を述べるのを躊躇した。もう議論するような雰囲気ではなくなっているように感じた。
「では、特に無いようなら変更なく計画通りに探索を進めるということでよいか? まあ、いずれにしろ各隊すでに限界まで拡散している。いずれの段階でか、見直すことにはなるが」
イリアエルはここで自分の意見を発するべきかまだ決めかねていた。しかし、そうして迷っているうちにナモクが早々に切り上げようとしているので焦った。
「思うに、タミルノの隊は第一陣である故に距離的には最もここから離れている。俺としては、他方面へ進んでいる別隊の進行をもう少し待ちたい。よってもう少し、このまま全方面へ拡散して探索を続ける。良いか?」
ナモクはちらとイリアエルを目で確認するようにしてから、すぐに締めくくった。
「ならば本日は散会。何かあればまたイリアエルのほうから知らせるとしよう。それでは」
ナモクはそう言うと頭だけの礼をしてつかつかと立ち去った。いつもならばイリアエルはその後を追って出るのだが、今日はそのまま席に座り直して大きな息を吐いた。
イリアエルは訳が分からなくなっていた。この会合は何のためだったのか。それに、なぜ多くの住人たちは何も話さないうちに退席してしまったのか。あれは抗議の意味なのか? しかし、それにしては穏やかであった。ナモクに任せるだと?
任せると言っても、そもそもナモクは何の策も持っていないのだ。結局ただ、このまま探索を引き延ばすと言っただけではないか。
「だれも……だれも真剣に考えていないのか?」
怒りというよりも急に孤独感がこみ上げてきた。何と愚かな。何が統治。信仰とは所詮こんなものか……無理もない。やはり真剣に、本気でクルを信仰することなど地獄に落とされる者たちに期待すべくもなかったのだ。
イリアエルはゆっくりと立ち上がると何一つ記録していないままの議事録を力なく抱えると部屋を出た。近しい者たちはその様子をただ目で追った。弛緩した空気が流れ、交わす言葉も少なく残りの者たちも帰った。