6
明日一番、と言っても厳密な時刻がないため、いつもならナモクとイリアエルが会所に着いたのを見計らって他の出席者が出かけてくる。しかも、実際には集まったところでたいした議題もなく、ただナモクたちの日常の体制執行に対する事後承認がごく事務的に行われる程度のものだったので、欠席者も多く全体に活気がなかった。
しかし、今回ばかりはまったく様子が違っていた。出席者は互いに連れ立って続々と会所に集まり、多くの者が色めき立って、騒然となっていた。結局ほぼ全員が集まっても肝心のナモクとイリアエルが現れないので、待ち切れなくなった何人かが、わざわざ二人を呼びに向かった。
すると、ナモクは自分の部屋でゆったりと水煙草を楽しんでいた。
「ナモク? 何をしている」
ナモクは落ち着いた口調で答えた。
「いや、イリアエルを待っているんだが、もうみんな集まっているのか?」
正式な会合が催される時にはイリアエルがナモクを呼びに来て、二人は同時に会所に入るのが常である。ナモクは特に急く様子もなくそのまま座っているので、呼びに来た者たちは
「とにかくすぐ来てくれ」
と言うと、そのまま今度はイリアエルのところに向かった。ずけずけと上がり込んで床を見ると、イリアエルはまだ眠っていた。
「イリアエル! どうした、もうみんな集まっているぞ」
イリアエルは声に気が付いてすぐに目を覚ましたが、
「ああ、すまない……寝過ごした」
と緩慢な動作で起き上がった。
「先に行っているぞ。とにかく急いで来てくれ」
「……ああ」
イリアエルはまだしばらくぼうとしていたが、一度大きな溜息をつくと、徐に着替え始めた。
部屋を出るとき、イリアエルは一瞬迷った。わざわざ呼びに来たところを見ると、もしかするとナモクはすでに先に会所へ向かったかもしれないが、もしかすると、いつも通りに自分を待っているのかも知れない。