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イリアエルはふうと息を吐いた。どうしてもナモクを目の前にすると飲まれてしまう気がした。もちろん、今までずっと自分が心酔し、追従してきた男なのだから仕方がないだろう。しかし、今のナモクは……別人だ。
この地で会衆が統一されるまでの長い間、ナモクはだれよりも情熱があった。それに人を従えることを当然のように振る舞う凄味があった。何よりもっと自分に厳しかったはずだ。
あれは信仰からくる信念ではなかったのか? 単に、この地全体を自らの配下に置きたいがための野心に過ぎなかったのか?
むしろこれからではないか。人々を導き、統治してクルのご意思を探らなければならないのだ。そのための統治……決して統治が、それそのものが目的なのではない。
イリアエルは結局ナモクの言った通り、緊急の招集を伝えるよう何人かの者に指示を出した。あらためて伝えるまでもなく、統治会に属する住人の代表たちは今回の新たな天光源の発見を知って論議の機会を待ち兼ねていた。
イリアエルは、自らも近しい者たちのところへ出かけて召集を知らせるとともに、明日自分が主張しようとする腹積もりを話して聞かせた。イリアエルは今回の天光源の発見を好機と考えていた。ただ、自分が何を言おうと最後はたいていナモクの一存で決まってしまうので、今回ばかりはあらかじめ周囲の賛同を取り付けておきたかった。
ただ、イリアエルは内心はどうあれ、一切ナモクに関して批判めいた発言はしなかった。それはイリアエル自身の誇りのため、あるいは己の美学としてそれを口に出すことを恥じたからである。